コロナ第3波に備える最新知識

目安は7時間 免疫力アップはまず「十分で良質な睡眠」から

重要なのは“質の高い十分な睡眠”
重要なのは“質の高い十分な睡眠”(C)日刊ゲンダイ

「医療崩壊」で多くの人が亡くなるかもしれない――。週末の報道を見て不安に駆られた人も多いのではないか。不安は免疫力を低下させる。いまは不安をあおる言説に惑わされすぎずに、自分のできる感染予防法に専念することだ。「ウイルスから体を守る」(サンマーク出版)の著者で、ハーバード大学医学部、ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師に話を聞いた。

「手洗い、マスク、3密回避、換気をしっかり継続しつつ、自分自身の免疫機能を上げることが重要です。食事に気をつけたり、運動するのもいいですが、重要なのは“質の高い十分な睡眠”です。睡眠中にウイルスを倒す力が最も高まるからです」

 体内に侵入したウイルスや細菌を攻撃するのは白血球だ。末梢血の白血球は顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、リンパ球で構成されている。その中にはさまざまな種類の免疫細胞が含まれる。例えば外敵に素早く反応し攻撃を加える、貪食細胞といわれる好中球とマクロファージ、樹状細胞だ。これらは外敵を捕食して「敵はここだ」と知らせてくれる。

「しかし、ウイルスは小さすぎるので貪食細胞だけでは処理できず、リンパ球の出番となります。リンパ球には外敵の情報伝達を担うヘルパーТ細胞、直接攻撃をするキラーТ細胞、ウイルスの情報を読み取って抗体と呼ばれる専用の武器を作るB細胞、ウイルスなどに感染した細胞を攻撃するNK細胞などがあります」

 これらの免疫細胞はまず外敵を見つけるとすぐに攻撃する自然免疫(好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞)、次に外敵の詳細情報を得てからしばらく後に動き出す獲得免疫(ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞)が攻撃する。

「ウイルスに対する免疫の主力であるリンパ球は副交感神経が優位になると増え、交感神経が優位になると減ります。また、副交感神経が優位になると、毛細血管が開き、末梢の毛細血管への血流が増え、そこを流れる酸素、栄養、免疫細胞も多くなる。つまり、副交感神経が優位の状態が継続する睡眠中にこそ、毛細血管を介してリンパ球が感染部位に運ばれやすくなり、ウイルスを倒す力も強まるのです」

 ちなみに、細菌を攻撃するのは顆粒球で交感神経が優位になると増え、劣勢になると減る。つまり、人は活動的で傷を負いやすい昼間には交感神経が優位になることで細菌を攻撃する力が、睡眠中は副交感神経が優位になることで体内に侵入したウイルスと戦う力が強くなるようにできているのだ。

「睡眠時間は、健康状態や年代によって異なりますが、7時間くらいが目安です。睡眠時間6時間以下を1週間続けると、免疫や炎症、ストレス反応に関係する遺伝子700個以上に悪影響が出たという研究結果があります。睡眠は質も大切です。スマホやパソコンの光源を寝る直前まで見ていると、深い眠りに導くホルモンの分泌が低下し、結果的に、細胞修復や免疫細胞に関わるホルモンの分泌が悪くなります。こうした悪しき生活習慣を改善することも、ウイルスから体を守るためには大切です」

 あなたは大丈夫?

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