AIが築くクスリの未来

症状に合わせて適切な薬を選ぶロボットが実用化されている

写真はイメージ
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 薬の半分は「情報」でできている――。そういってもよいくらい薬において情報は大切です。用法・用量や副作用など薬を安全に使うために情報は欠かせません。

 また、そうした情報に基づいて薬を使った結果がどうだったか、という「記録」もまた情報として重要です。「使用例に関する記録」=「薬の使用に関する経験や知識」となるわけですが、収集されていなかったり、共有されていなかったといった「情報がない(入手できない)」問題が発生しているのも事実です。

 こうした医薬品に関する情報の収集や管理に情報通信技術(ICT)が用いられ、その整理に人工知能(AI)が活用され始めています。

 文章の整理に用いられているのが「自然言語処理」という技術です。文章の中から単語を自動で抜き出したり、単語の前後関係を整理したり、文と文の関係性を整理する技術です。応用例として一番わかりやすいのは、質問に受け答えをしてくれる携帯電話やパソコンのシステム、自動応答ロボットでしょう。こちらの話していること、つまり“入力された文章”をプログラムで処理し、理解したように振る舞い、データベース内から適切な回答を返すというものです。

 他にも自然言語処理の一部が使われているものもあります。携帯電話のアプリで、文字を入力すると次の単語が表示される機能などがそれにあたります。

 こうした自然言語処理の技術が薬の情報に応用されつつあります。たとえば、薬局で症状に合わせて適切な市販薬を選んでくれるロボット、薬に関する質問に答えてくれる製薬企業のホームページ上のロボットは、すでに誰でも使うことができます。

 薬を個別の症状に合わせて安心して使うための「情報」に対しても、AIが使われ始めているのです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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