冬の正しい入浴法 熱い湯に肩までつかると疲労は回復しない

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 寒い冬。熱い風呂につかって冷えて疲れ切った体をじっくり癒やすという人は多いだろう。しかし、この入浴法は逆効果になりかねない。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏に詳しく聞いた。

 湯船につかって体を温める入浴に疲労回復効果があるのは間違いない。手や足の末梢血管をはじめ全身の血管が拡張して血行が促され、自律神経の負担が軽減される。さらに、体内の疲労物質や老廃物が流れやすくなって疲れが取れる。精神的なストレスを軽減するリラックス効果も疲労回復につながる。

「脳の中にある自律神経の中枢に負荷がかかると、これ以上、酷使しないように脳が疲労感を自覚させようとすることで『疲れた』と感じます。つまり、疲労回復には自律神経をしっかり休ませることが重要です。自律神経は、呼吸、心拍、血管の収縮と拡張など、全身の血液循環のすべてをコントロールしているため、血流を安定させることが一番大変な仕事です。ですから、入浴で血行を良くすると疲労回復効果があるのです」

 しかし、寒いからといって熱い湯につかると逆効果になってしまう。

「43度以上の熱い湯に肩までつかると、体温、心拍、血圧が大きく変動します。体温上昇を抑えるために汗をかくなど、自律神経はフル回転で活動します。自律神経に負担がかかると、活性酸素が体内に大量発生して神経細胞を酸化させ、自律神経の機能低下を招きます。熱い湯につかると疲労が増大してしまいます。疲れた日に熱いお風呂に入ると、余計に疲れるだけなのです」

 また、体が冷えたままいきなり熱い湯につかったり、逆に熱い湯から上がって急に冷えると、血圧が急激に上下動して心筋梗塞や脳卒中を引き起こす「ヒートショック」を招く危険もある。

■40度以下のお湯で5分程度

 では、冬の正しい入浴法はどのようなものなのか。まずはお湯の「温度」に注意する。

「自律神経の負荷をなるべく少なくするには、お湯は40度が理想的です。ぬるく感じる人は、湯船につかってから追いだきをして温めるようにしましょう。浴室暖房などで浴室全体を暖かくしておいてからお湯につかるといった工夫も効果的です」

 お湯につかる「時間」にも気を配りたい。お湯の温度を40度以下に設定しても、長時間にわたってつかっていると、血圧が大きく変動して自律神経に負荷がかかる。長時間の入浴でのぼせたり、目まいやふらつきを起こしたりするのはそのためだ。

「お湯につかるのは、肩までなら38~40度のお湯に5分程度にしましょう。入浴の目的は血行を良くすることで、そのためにはこの時間で十分です。また高齢者の場合、ぬるいお湯でも長時間入り続けていると皮膚の水分を保持する皮脂が流れ落ち、皮膚に亀裂や鱗屑が生じてかゆくなる『老人性乾皮症』につながるリスクがあります」

 お湯のつかり方は「半身浴」がいいという。

「肩深くお湯につかると横隔膜が押し上げられ、さらに水圧で静脈環流が増えて心臓の負荷が強くなるので、心臓位置までの高さの半身浴が理想的です。われわれの研究では、全身浴よりも半身浴のほうが疲労の度合いが少ないことが分かっています。半身浴なら、入浴時間は10分程度が望ましいといえます」

 これで寒い冬でもしっかり疲労を回復できる。

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