新型コロナは「血管」の病気 冬は血栓ができやすく要注意

血栓対策も必要
血栓対策も必要(C)日刊ゲンダイ

 英国などで新型コロナウイルスの変異種の感染が拡大していることで世界が緊張している。変異は最初に報告された新型コロナウイルスに比べて14種類の変異を持ち、3種類のアミノ酸欠失があるという。これにより感染力が従来種よりも強まり、比較的感染しにくいとされた子供の感染者が増えるとの見方もある。日本で変異種は見つかっていないが、いつ侵入してくるとも限らない。東邦大学医学部名誉教授で循環器専門医の東丸貴信医師に聞いた。

「変異種は従来種の70%感染力が強いといっても数値はあくまでも現時点での話です。今後も感染力が強力なまま維持できるかはわかりません。新型コロナが登場した当初はSARSの1000倍の感染力があるかもしれない、といわれましたが、実際はそんなことはありませんでした。しかも、強毒化したという報告はないのです。厳重警戒は必要ですが、状況を冷静かつ正確に把握することが大切です」

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も21日の記者会見で「英国政府から変異種は感染力は強いものの、現時点で重症化する確率や死亡する確率を上げるという根拠はないと報告を受けている」と語っている。

「変異種が日本に入ってこなくても冬の間は新型コロナの患者さんは増えていくでしょう。だからこそ、今は新型コロナ感染症の本質が血管の病気であることを知ることが大切だと思います」

 この病気は当初は新型肺炎といわれ、ウイルスもSARS―COV2と命名されていることから、上気道から肺にかけての呼吸器感染症とみなされてきた。

 しかし、いまは心臓や血管の炎症、腎臓障害、消化管炎症、脳神経炎、そして急性心筋梗塞や脳梗塞といった血栓症を生じることが明らかになっている。

「若い人の原因不明の脳梗塞や心筋梗塞の原因として、新型コロナが関係していることも分かってきているのです」

■新型コロナ感染症は単なる上気道炎や肺炎ではない

 実際、新型コロナによる心筋炎もまれではなく、心不全の原因としてもコロナ感染症が注目されている。さらに、川崎病や大動脈炎などを生じることもわかっている。いまや世界中の精力的研究により、新型コロナ感染症の本態は血管内皮障害であることが証明されつつあるという。

「血管内皮は血管内を覆う一層の細胞層です。血管を拡張させる一酸化窒素やこれを縮めるエンドセリンなど数多くの血管に働きかける物質を分泌していて、血管壁の収縮・弛緩から、血管壁への炎症細胞の接着、血管透過性の調節などを行っています。生活習慣病やがん、それに感染などで酸化ストレスが加わると、血管内皮細胞や平滑筋細胞などから産生される活性酸素種が内皮細胞を傷つけます。その結果、炎症、免疫反応が生じ、それが毛細血管や大血管、全身の臓器に広がることで、急性心筋梗塞、脳梗塞や肺動脈血栓塞栓症などの急性血栓症や心筋炎・血管炎が発症したり、全身の臓器障害が生じることとなるのです」

 血管内皮障害が起きると腎不全や肝障害に加えて間質性肺炎が生じるともいわれている。

「私の救急センター時代の経験でも、重症間質性肺炎の患者さんでは、酸化ストレスが亢進して深部静脈血栓症が生じやすく、血栓マーカーのDダイマー値と肺動脈圧の上昇が目立ちました。これは、その後の研究で静脈血栓塞栓症が生じているか、その前段階にある可能性が高いことが証明されています」

 このように、新型コロナ感染症は単なる上気道炎や間質性肺炎ではなく、全身の血管内皮にも影響が及ぶ血管病であることが明らかになりつつある。

「ですから、新型コロナウイルス感染症の正確な診断と評価には、感染確定にPCR検査、肺炎診断のためのCT検査はもとより、血栓症診断のためのDダイマー測定、心臓と末梢動静脈超音波検査、全身の血管と血流を見るためのMRA検査が必要です。また、冬はただでさえ寒さで血管が締まりやすく血流が滞り血栓ができやすくなるので注意しましょう。新型コロナに万一感染しても重症化しないためにも体を適度に動かして、ストレスをためない生活習慣を続けることが大切なのです」

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