コロナ第3波に備える最新知識

日本上陸「変異種」は最悪期の始まりか感染収束の始まりか

変異種が日本にも上陸
変異種が日本にも上陸(C)日刊ゲンダイ

 ついに新型コロナウイルスの変異種の世界的流行が始まった。英国を中心に欧州で昨年末に発見された新型コロナウイルスの変異種は昨年12月25日には日本でも確認されたが、もっと前に上陸していた可能性もある。その後、北米などでも発見され、従来型から変異種への置き換わりが急速に進んでいる。

 コロナウイルスは通常、12日程度に1アミノ酸が変異し、年間30個程度、変異が蓄積することが知られている。

 しかし今回は、ウイルスが細胞に侵入する際に働く遺伝子や免疫を制御する遺伝子に変異が入った新種が拡散していることから、感染拡大スピードが増大し、新たな悲劇を生むのではないか、と緊張しているのだ。

 実際、新たな変異株を公表した英国の学者は、従来型よりも感染力が56%強いことを公表し、これまでは少なかった子供の感染も増加するのではないか、と警告を発している。

 今回のウイルスの変化はさらなる悲劇を生むのか、それとも感染収束の始まりなのか?

 宮沢孝幸京都大准教授(ウイルス学)が言う。

「現時点(昨年12月27日=以下同)では情報が少なすぎてどうなるかはわかりません。ただ、私はそれほど悲観的には考えていません。一般的にコロナウイルスは長い目で見ると、感染力が増すとともに病原性は弱くなり、宿主と共存するからです」

 新型コロナウイルスは人類が初めて直面した新しいタイプのコロナウイルスだったためにパンデミックを起こしたが、現在、人に風邪を起こすコロナウイルスとして確認されている4種類も大昔はパンデミックを起こしたのかもしれない。そして、パンデミックを起こした後に長い時間をかけてヒトに定着した可能性が高いのだという。

 とはいえ、それは中長期の話であり、短期的にはどうなのか?

「短期的にどうなるかはわかりません。むろん、感染力が上がれば、糖尿病や肺の疾患などの持病がある人も感染する確率が高くなるので、一時的に重篤な患者さんや亡くなる人は増えるかもしれません。ただし、一部で報じられているように変異種が従来型に比べて体内での増殖速度が高まっているのが本当なら、ウイルスの病原性は高まるのが普通です。ところが現時点では変異種に感染した患者さんにとくに目立った重篤な症状の増加がみられないといわれている。そのことからそれほど病原性が強まったということはなく、むしろ弱くなった可能性もあります」(宮沢准教授)

 宮沢准教授が心配しているのはむしろ、変異したことで新型コロナウイルスがいつまで体内に残るかということだ。

「猫や牛などの動物のコロナウイルスは、症状を起こさずに体内で感染が持続するケースが少なくありません。私が気になるのは、新型コロナが変異によって他の動物のコロナウイルスのように症状を起こさないで感染が持続することです。そうなるとPCR検査を受けてもずっと陽性のままとなり、隔離が解けなくなり、仕事や学校などに復帰できなくなってしまいます」(宮沢准教授)

 ちなみに欧米では変異種は、ヒトから動物、動物からヒトへのピンポン感染や薬などの治療により遺伝子が変異したからではないか、との見方がある。しかし、これには宮沢准教授は否定的で「単に感染者数が多くなり、変異の確率が上がったため」だという。

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