変異種が続々…新型コロナワクチンはどこまで有効なのか?

日本は来月下旬からの見込み
日本は来月下旬からの見込み(C)ロイター

 英国を皮切りに、米国、イスラエル、バーレーン、ドイツ、フランスなど、世界各国で新型コロナウイルスワクチンの接種が進んでいる。日本では2月下旬から接種がスタートする見込みだ。

 異例の早さで承認されたワクチンだけに副作用が不安視されているが、効果についても疑問の声があがっている。このところ続々と新型コロナウイルスの変異種が報告されているため、ワクチンが効かないのではないかというのだ。

 たとえばインフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型という4種類の「型」があり、主にヒトに流行を起こすのは、A型とB型のウイルスとされている。さらにA型は、細胞に侵入する際に使う2種類のスパイクタンパク質(Sタンパク質)の組み合わせによっていくつも亜型があり、A香港型、Aソ連型などに分類されている。B型にも主に2系統あることがわかっている。

 インフルエンザワクチンは、異なった型のウイルスに対しては効果が低くなってしまう。そこで、年ごとにどの型が流行するかを予測してワクチンが作られ、近年はA型2種類、B型2種類に対して免疫を作る4種混合ワクチンが使われている。

■「型」が変わるほどの大幅な変異はない

 では、各地で変異が報告されている新型コロナウイルスのワクチンはどうなのか。

 新型コロナウイルスは、発生から昨年12月までに8種類の系統種に分類されている。初期型のS、L、O、Vから、G変異型のG、GH、GR、GVへ移行し、さらに南アフリカで新たに変異種が確認された。ただ、これらの変異はいずれもウイルスのゲノムの全長の0・1%に満たないわずかな変異で、「型」が異なるほどの大幅な変異ではないという。

 米国の研究機関で遺伝子研究に携わってきた岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏は、「ファイザー社もモデルナ社も『発見されたウイルスの変異は非常に小さいため今回のワクチンで対応できる』と発表しているように、変異種に対してワクチンの効果がなくなることは考えにくい」と続ける。「しかも、今回のワクチンは『mRNAワクチン』と呼ばれるまったく新しいタイプのワクチンで、新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入するときに使うSタンパク質を作る遺伝情報を含む物質を投与して免疫を作る仕組みです。新型コロナウイルスのmRNAの塩基配列が大幅に変異すればワクチンの効果が小さくなる可能性はありますが、遺伝子実験レベルではmRNAの塩基をいくつか変異させることは頻繁に行われていて、その程度ではワクチンの親和性が悪くなるケースは経験上では起こりにくいといえます」

 もちろん、これからウイルスに大幅な変異が起こればワクチンが効かなくなる可能性はある。しかし、現時点ではワクチン接種が“ムダ”になることはないといえる。

「とはいえ、そもそも今回のワクチンが新型コロナウイルスに対してどこまで効果があるのか、どれくらい効果が持続するのかもはっきりわかっていません。大規模な接種が始まったばかりでデータが不足しているのが現状です。ウイルスの変異に対してワクチンが対応できるのかどうかは、そうした大規模データが出揃ってからでないと判断できないといえます」(神崎氏)

 現時点では、ウイルスの型の違いはワクチンを接種するかしないかを決める際の判断材料にはならない。やはり、メリット(=効果)とデメリット(=副作用)をはかりにかけ、自身の感染リスクや重症化リスクをしっかり考慮したうえで決めるべきだろう。

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