コロナ第3波に備える最新知識

ワクチンは効果ありそうだが…集団免疫は獲得できるのか?

(C)ロイター/Dinendra Haria/SOPA Images/Sipa USA

 新型コロナウイルス収束に向けて、世界中がワクチン接種に躍起になっている。

 その狙いは新型コロナウイルス感染症による重症者数を減らし、集団免疫を完成させて蔓延の防止を図ることにある。

 集団免疫とは、特定の集団のなかで感染症にかかるか、ワクチンを打って、多くの人が免疫を獲得し、それにより集団全体が感染から守られるようになる現象を指す。

 集団免疫を獲得するにはその集団内にどの程度の割合の免疫保有者(集団免疫閾値)が存在すればいいのか。

「昨年3月には人口の6割が感染すれば流行が収束するといわれました。感染疫学の本場である英国の疫学の教授がそう主張したからです。英国などは、この主張に基づいて積極的な感染対策を打ち出しませんでした。その結果、感染大国になったのです」(弘邦医院・林雅之院長)

 過ちの原因は「何も対策をしなければ感染者は右肩上がりに増えて人口の6割以上が感染する」と考えたことだ。

 しかし、感染が深刻といわれた中国・武漢であれ、横浜に寄港したダイヤモンド・プリンセス号であれ、感染者がその集団の2割を超えることはなかった。感染が広がるにつれ、免疫力の強い人が残り、感染効率が落ちるうえ、多くの人が予防策を取ったからだ。そのため、いまでは集団免疫閾値の計算は、基本再生産数(1人の感染者が周りの免疫を持たない人に平均何人にうつすかを示す数字)ではなく、実効再生産数(すでに感染が広がっている状況下で1人の感染者が平均何人にうつすかを示す数字)で計算する方がいいとされている。結果、集団免疫閾値は、状況により、その数値はすぐに変化するため一定にならないものの、総人口の2割程度でもいいのではないか、との意見がある。

 そこで注目されるのがイスラエルだ。ワクチン接種が世界最速で進んでいるからだ。人口920万人のこの国では1月21日時点でおよそ27%に当たる244万人が1回目のワクチンの接種を終えている。

「問題はワクチン接種の効果がいつ表れるか、です。イスラエル保健省のワクチン接種に関する暫定数値によると、接種後7日以内の感染が確認されたのが4484人、8日から14日以内が3186人に対し、15日から22日経過した人では、353人でした。ワクチン接種後の入院人数は、375人で、そのうち、接種から2週間を超えている人は7人でした。このことからワクチンは接種後約2週間で免疫を獲得すると推定されます」(林院長)

 一方、イスラエルの累計回復者数は22日までに49万7347人。つまり、イスラエルでは免疫を獲得すると考えられる人は2月上旬には約294万人と人口の3割を超えることになる。イスラエルのネタニヤフ首相は「ワクチン接種がこのままうまく進めば、2月にもパンデミックを脱することができる可能性がある」と語っている。それはその時点で集団免疫が完成すると考えているからではないか。

 むろん、中和(ウイルスを不活化する)抗体を得られたとしても、いつまで効果が続くかはわからない。とはいえ、イスラエルの今後は、東京五輪を含めた、世界の近未来を占うことになりそうだ。

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