新型コロナ「軽症だったのに急に悪化して死亡」を防ぐ準備

本来は手術中などに使われる医療機器(円内)/
本来は手術中などに使われる医療機器(円内)/(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス対策で注目を集めているのが、「パルスオキシメーター」だ。昨年までは高額で気軽に手に入れられなかったが、今はネットで購入でき、値段はだいたい数千円だ。

 コロナでは、無症状や軽症だったのに、急に容体が急変して亡くなるケースが相次いで報告されている。パルスオキシメーターを手に入れておくことで、それを食い止められるかもしれない。

「パルスオキシメーターは、血液中(動脈)のヘモグロビンにくっつく酸素の割合を測定し、呼吸がうまくできているかどうかを調べる機械です」(国際医療福祉大学熱海病院検査部・〆谷直人部長=以下同)

 指先に挟むだけで測定でき、だれでも簡単に使える。「サチュレーションモニター」「経皮的酸素飽和度計」「血中酸素測定器」「SpO2測定器」という名称もあるが、いずれもパルスオキシメーターのことだ。

 コロナ関連のニュースで「酸素飽和度」という言葉がよく出てくる。この酸素飽和度が、パルスオキシメーターで測定できる「血液中のヘモグロビンにくっつく酸素の割合」になる。

「普通、酸素飽和度は96~98%くらい。これが95%未満になると、正常より体の中の酸素が少ない状態で呼吸不全の疑いがあり、90%以下になると呼吸不全と言えます。酸素飽和度90%未満は在宅酸素療養の適用です」

■幸せな低酸素血症

 コロナ関連ニュースで「酸素飽和度」と並んでよく出てくる言葉が「低酸素血症」で、酸素飽和度が90%を下回った状態を指す。動脈血に溶ける酸素の量が著しく少なくなるため、体の隅々に酸素を送れなくなり、最終的には命に関わる。

 コロナ感染で無症状や軽症だったのに急に容体が悪くなるケースをアメリカの学術雑誌「サイエンス」が「ハッピーハイポキシア(Happy hypoxia=幸せな低酸素血症)」と呼び、世界中に広まった。

「もともと航空医学で使われている言葉で、パイロットに起こることがあります」

 低酸素血症になると、今までできている行動が取れなくなったり、判断能力が鈍ったりする。この症状を「多幸感」といい、とても具合がよく、素晴らしくいい気分になるといわれている。これを「幸せな低酸素血症」と呼ぶ。

 通常は、酸素飽和度が90%を下回ると、息苦しくて仕方なくなる。ところが、「幸せな低酸素血症」に陥った場合、苦しさを感じないため、自分が低酸素血症になっていると気付けず、初期症状を見逃してしまう。結果、気付いたときには重症化しており、死亡リスクが高くなる。

「低酸素血症の人が全員『幸せな低酸素血症』になるのではありません。一部ではあるものの、コロナに感染していたことが分かり、軽症と診断されたけれど『幸せな低酸素血症』になってしまうのではないかと心配な場合は、低酸素血症を視覚的に判断する方法としてパルスオキシメーターを使用する手があります。パルスオキシメーターは簡易的ではありますが、早期に低酸素血症かどうかを判断できます」

 低酸素血症を起こしていると、前述の通り酸素飽和度は90%を下回る。そこまで待たず、95%未満ならば医療機関に連絡し、医師の指示を受けるべきだ。高齢者はもともと酸素飽和度が低い場合が多いので、すぐに低酸素血症に達してしまう可能性がある。感染者数が爆発的に増え、また感染力が高いといわれる変異種が登場した今、事前に準備をしておくに越したことはない。

 ちなみに、記者が自分用と老親用にネットで購入したパルスオキシメーターは、送料込みで3980円だった。到着までしばらくかかるという(1月20日時点)。

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