役に立つオモシロ医学論文

新型コロナ感染対策 公衆トイレの利用で気を付けることは?

手で触れる頻度が高いところは要注意
手で触れる頻度が高いところは要注意

 新型コロナウイルスは感染者の飛沫(ひまつ=せきや、くしゃみをしたときに出る細かい水滴)を吸い込んだり、飛沫が付着している環境表面を手で触れ、その手で口や鼻などを触ることで感染します。また、感染者の便の中に新型コロナウイルスが排泄(はいせつ)されたとの報告もあり、トイレの水を流す際にウイルスが舞い上がり、それが感染のリスクとなる可能性も指摘されています。

 そんな中、環境科学に関する国際誌の2021年1月号に、トイレなどの環境表面におけるウイルスの検出状況を調査した研究論文が掲載されました。

 この研究では新型コロナウイルス感染患者が入院している隔離病棟の環境表面から107個の検体サンプルを採取し、新型コロナウイルスが付着していたかどうかが調査されています。なお、採取されたサンプルは隔離病棟のトイレ(浴室、洗面台と一体型)から37個、隔離病棟のトイレ以外から34個、隔離病棟以外から36個でした。

 調査の結果、107個のサンプルのうち新型コロナウイルスの陽性反応を認めたのは4個で、病室のドアノブから2個、便座カバー、浴室のドアノブからそれぞれ1個でした。また、弱いながらウイルス陽性を認めたサンプルは3個あり、便座、洗面台の蛇口レバー、浴室天井の排気ルーバー(通気口)からそれぞれ1個でした。

 便座やドアノブ、洗面台の蛇口レバーなど、手で触れる頻度が高い場所からウイルスが検出されているようです。新型コロナウイルスは環境表面で9時間から数日にわたり生存できると考えられています。駅や飲食店などの公衆トイレに限らず、電車のつり革や階段の手すりなど、不特定多数の人が触れる頻度の高い場所を触ったあとは、しっかり手を洗うことが大切です。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

関連記事