コロナ禍で自宅にこもる今年は「冬疲労」に気をつけたい

緊急事態宣言も延長されて…
緊急事態宣言も延長されて…(C)共同通信社

 寒い冬は疲れがたまりやすく、慢性疲労による心身の不調や免疫力の低下を招くリスクが高くなる。新型コロナ禍中の今冬はさらに条件が悪化している。どう対策すればいいのか。「東京・疲労睡眠クリニック」の梶本修身院長に聞いた。

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 冬に疲れがたまりやすくなる原因は「寒暖差」が大きく影響している。

 ヒトには生命を守るために体の状態や機能を一定に保とうとする「ホメオスタシス」という仕組みがある。たとえば、われわれの深部体温(体内の臓器の温度)は37度前後に保たれていて、暖かくなると体温を発散させるために血管を拡張させ、逆に寒くなると体温を逃がさないように血管を収縮させて血圧が上昇する。

「体温、血圧、呼吸、心拍数、消化吸収、睡眠、摂食など、恒常性を維持するためのさまざまな働きは、すべて自律神経によってコントロールされています。暖かい環境から急に寒い環境にさらされるなど寒暖差が激しい状況が増えると、それだけ自律神経が酷使されることになります。脳にある自律神経の中枢に負荷がかかると、これ以上、自律神経を酷使しないように脳は『疲労感』を自覚させようとします。つまり、自律神経が酷使される場面が多くなる冬は、疲労がたまりやすくなるのです」

 コロナ禍の真っただ中にある今年の冬は、多くの人がなるべく外出を避けて自宅にこもりがちになっている。そのため、寒さに適応できるように体を徐々に寒さに慣らしていく機能=寒冷順化が不十分な人がたくさんいる。

 体が準備不足なまま暖房の効いた暖かい部屋から気温の低い室外へ出ると、なおさら自律神経はフル回転を強いられ、疲弊してしまう。

「湿度が50%の環境の場合、寝室やリビングの室温は20度前後が理想的とされています。しかし、部屋にこもりがちな生活を続けていると、20度前後でも寒く感じるため、暖房を強めて25度以上の環境で過ごしている人も多い。そうした人がたまの機会に外出すると、さらに寒暖差が大きくなり、なおさら自律神経の働きが追いつかなくなってしまいます」

 冬の寒暖差は室内と屋外だけで生じるわけではない。部屋の中でも寒暖差が生まれ、自律神経に負担を与えるという。

「暖房設備を稼働させたとき、冷たい空気に比べて体積が大きい暖かい空気は部屋の上にたまります。そのため、足元は冷えているのに頭部が温まっている状態が続き、脳がのぼせてしまうケースも少なくありません。『のぼせ』は脳温度が上昇し体温をコントロールする力、すなわち自律神経の疲弊を意味します」

■二酸化炭素の濃度にも注意

 また、冬は暖かい室温をキープしようとして窓を開けて外気を取り込む機会が少なくなる。さらに、コロナ禍では家族全員が室内で過ごす時間が増えているため、呼気によって室内の二酸化炭素の濃度が高くなっている恐れがあるという。

「大気中の二酸化炭素濃度は0・03%ですが、呼気には4・5%の二酸化炭素が含まれています。われわれは呼吸によって空気中の酸素を取り込んで血流という形で脳に届け、体内にたまった二酸化炭素と交換しています。体内の二酸化炭素濃度が高くなると血液が酸性に傾き、呼吸をつかさどる自律神経が正常に機能することができません。その結果、倦怠感や頭痛などの症状が表れるため注意が必要です」

 自宅で過ごす時間が長い今年の冬に疲労を慢性化させないためには、寒暖差をなるべく小さくすることを心がけたい。

「暖房の設定温度は20度を基本にして、定期的に窓を開放して外気を取り入れてください。また、部屋に小窓がある場合は、換気扇を常に回しながら小窓を開けておくのもいいでしょう。こまめな換気を心がければ、寒冷順化も促せるうえ、室内の二酸化炭素濃度も低くすることができます。寒い時は下半身を中心に暖かい服やひざ掛けなどを活用しましょう。こまめに衣服を着脱したり、温かい飲み物を取るなどして体温を調整するのも効果的です」

 寒暖差に注意してコロナ禍の冬を乗り切ろう。

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