大腸がんは「痛くない検査」で早期発見と根治を目指せる

赤身肉が大腸がんの発生に影響を与えているといわれているが…
赤身肉が大腸がんの発生に影響を与えているといわれているが…

 年々増加しているのが大腸がんだ。がん死亡率の高さでは肺がんに次ぐ2位で、女性に限れば最も死亡率が高いがんである。

「21世紀は大腸の時代といわれています。ピロリ菌感染は終息して胃がん罹患者は減少。C型肝炎も薬で治るようになってC型肝炎による新規肝臓がんは減っていきます。一方で、大腸がんは増えているのです」

 こう指摘する広島大学病院内視鏡診療科教授の田中信治医師によれば、かつてアメリカは「大腸がん大国」といわれていた。しかし、現在は死亡率が減少。それは食生活改善が功を奏したのではなく、50歳以上は無償で大腸内視鏡検査を受けられるという国策によって、検診が普及したからだ。便潜血と内視鏡を合わせると受診率が約7割になり、死亡率減少につながった。

 一方、日本では便潜血検査が大腸がんの1次検診となっているが、便潜血の受診率は、職場での検診62.8%、人間ドック68・7%、自治体など地域検診が32.6%。大腸がんは50代から増え始め、加齢とともにハイリスクになるのに対し、定年退職後の受診者が多いだろうと考えられる地域検診が3割と非常に低い受診率だ。

「アメリカの7割と日本の3割の差は大きい。しかも日本では、便潜血検査で陽性になっても、その次の精密検査である大腸内視鏡検査の受診率は6割程度。4割の人が受けていないのです」(田中医師=以下同)

 大腸がんは早期に発見すれば内視鏡で根治できる。大腸内視鏡検査を受けないのは、早期発見のチャンスを逃していることになる。

 大腸がんは前述の通り50代から発症リスクが上がる。50歳を越えたら便潜血検査または大腸内視鏡検査を受けるべき。大腸がんは親や兄弟姉妹に発症者がいる場合にリスクが高くなる。特に家系にがん患者がいて、50歳未満で大腸がんなどを発症していたり、複数のがんを発症している人がいればリンチ症候群の可能性がある。これは、常染色体優性遺伝で約8割が生涯の間に大腸がんを発症するといわれている。疑わしいようなら50歳未満でも大腸がん検診を受けたほうがいい。

「大腸内視鏡検査が恥ずかしいという人がいますが、どこの病院でもお尻部分に切れ目の入ったトランクスをはき、その上に術衣を着て検査を行います。実際に受けてみれば恥ずかしいということはないと思います」

■カプセル内視鏡なら飲み込むだけでOK

 大腸内視鏡検査は痛いから受けたくないと考える人もいるだろう。その場合、大腸カプセル内視鏡という手がある。

 2014年に保険適用取得。これまでは、大腸内視鏡検査では腹腔内の癒着や器質的異常で全大腸の検査が十分に行えなかった場合に適用だったが、昨年4月から適用拡大。3剤の異なる降圧剤を用いても血圧コントロールが不良の人や、高度肥満症で糖尿病、高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を1つ以上合併している人などが保険適用で大腸カプセル内視鏡を受けられるようになった。

「大腸カプセル内視鏡は2センチほどで、くるくる回りながら大腸内を撮影します。視野角が内視鏡より広く、カプセルの両サイドにカメラが付いているため、内視鏡では見落としやすいひだの裏側にできた病変や平らな病変も撮影でき、診断能は非常に高い」

 メリットとして、口からのみ込むので痛みがなく、検査中も自由に行動できる。X線被曝がなく、大腸内視鏡検査に伴う偶発症の穿孔も発生しない。

 デメリットは、大腸内視鏡は病変が見つかったらそのまま治療できるが、カプセルではできない。改めて大腸内視鏡検査が必要だ。それでも便潜血検査に続く検査法として、受診のハードルが低い意味は大きい。

「カプセル内視鏡という選択肢があることを知らない人も珍しくない。ぜひこれで、大腸がんを早期発見してほしい」

 早期発見できる人がもっと増えれば、大腸がん死亡率は減少していくことは確実である。

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