セックスが痛い

「人と同じ」に振り回されず、自分軸で考えれば幸せになれる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人と同じことができない自分はダメ人間――。心因性の性交痛でセックスができないと、身体的には問題がない分、特に若い世代ではより自分を責めてしまいがちです。今後、治療が進めばいいなと願う一方で、「人と同じこと」という考え方から解放され、自由な人生を送ってほしいとも思います。

 私は10年前、不妊治療をしていました。当時を振り返ると、本当に子供が欲しいのか自問することもなく、ただ周囲の友人が次々と妊娠していくのを悔しく感じたり、幸せに見えて劣等感を抱いていました。

 実際の不妊治療は想像以上につらく、投薬による体のむくみや心身の不調に悩まされ、正社員で働く限界を感じて辞職しました。しかし、本当に子供が欲しかったのか、自分に問うてみたのは、恥ずかしながらごく最近。そこで思い至ったのは、子供を心底望んでいたのではなく、誰かより劣るという意識や、性交痛の罪滅ぼしを、妊娠でなんとか埋め合わせたいと考えていたのではないか、ということです。

 ずっと子供が持てなかった自分をかわいそうだと感じていました。不妊治療をしていた頃と同年代のカップルが赤ちゃんを連れていると、こっそり泣いていました。本当は子供を望んでいなかったのに、人と同じことができない自分を10年近くも哀れんでいたのです。

 まったく心理的に健康ではないし、幸せでもありません。この連載や取材を通じていろいろな話を聞き、自分の胸に手を当てるようになって、“自分軸”で考えず、「人と同じこと」に振り回されるのは不幸せを招くと気づきました。今は、自分にかけていた呪縛から解放され、自分らしく、自分の幸せを考える練習をしながら、日々過ごしています。

 挿入しないセックスだってありだし、お互い納得していれば触れ合いなしの結婚もあり、シリンジキットでの妊娠もあり。解決できない性交痛があっても、自分の考えをパートナーに打ち明け、自分が生きたい、幸せな人生を歩もうではありませんか。

小林ひろみ

小林ひろみ

メノポーズカウンセラー。NPO法人更年期と加齢のヘルスケア会員。潤滑ゼリーの輸入販売会社経営の傍ら、更年期に多い性交痛などの相談に乗る。

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