東京、大阪、京都、兵庫で3度目の緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出を控えている人がこれまで以上に増えている。しかし、自宅にこもって日々の運動量が過度に減ると、とくに高齢者の場合は深刻な状態を招きやすくなる。「究極の健康習慣」の著者で江戸川病院院長の加藤正二郎氏に詳しく聞いた。
われわれは健康な人でも絶対安静の状態では1日で1~3%、1週間で15%、3~5週間で50%の筋力が低下するといわれている。また、横になっている状態では心臓から送られる1回の血液の量が6~13%減少し、呼吸筋が弱ったり、のみ込みでむせる(誤嚥)などして肺炎を生じやすくなる。
ほかにも、座っている時間が長い人は、心血管疾患、糖尿病、がん、認知症といった病気を発症するリスクが高くなることが報告されている。
「大腿骨骨折を起こした80歳以上の高齢者の予後は1年でおよそ10%が亡くなり、5年生存率は30~50%とがんにも引けをとりません。『動かない』ことはそれくらい深刻な状態につながります。背中が丸くなったり、背が縮んでしまう圧迫骨折の患者さんに対しても、近年は『寝て治す』ことは避け、セメントを詰めるバルーン椎体形成術という手術を行うケースが増えています。タイミングを逃さず手術を行えば劇的な回復が望めるので、体を動かさずに一気に衰えてしまうリスクを減らせるのです。高齢者こそ積極的に体を動かしたほうがよく、健康的に生活するためには動き続けることが最善です」
加藤院長は、高齢の患者に対し、少し無理めと感じるくらいに体を動かすことをすすめている。そのために「グーパージャンプ」と名付けた運動法を考案した。
手軽にどこでもできる運動なので、コロナ禍の外出自粛の影響により運動量が激減している高齢者にうってつけだ。
■朝夕合わせて30秒足らず
やり方は、いたって簡単。
①股下の長さよりも少し低い高さのテーブルを用意する
②跳び箱を跳ぶときの要領で、テーブルに肩幅よりも少し広いくらいにして両手をつく(写真A)。体をテーブルに近づけすぎないようにして前傾姿勢を保つ
③その体勢から足を揃えてジャンプし、空中で足を開いてから着地する(写真B)
④そのまま続けてジャンプして、今度は足を閉じて着地する。関節を使いながらふんわり跳んで、ドスンドスンと音を立てずに着地するのがポイント
「足を閉じる『グー』を1回、開く『パー』を1回として数え、朝10回、夕方に10回行うだけでOKです。朝夕合わせても30秒もかかりません。体重がかかる大きな筋肉が動くうえ、股関節を左右に開いてよく動かすことになるので、これだけで転倒しづらくなります。物足りなくなってきたら回数を増やすのはもちろん良いのですが、回数とスピードを増やすよりも跳ぶ高さと幅にこだわり、毎日継続することが重要です」
グーパージャンプは「最低限これだけできていれば大丈夫な運動」として考案されたもので、まったく運動をしてこなかった人や高齢者でも、これなら無理なく続けられる。
長引く自粛生活で運動量が減っている人はすぐにでも始めたい。