新型コロナワクチンの疑問に答える

「インド型」と呼ばれる二重変異ウイルスはどのようなものか

酸素不足の危機に…
酸素不足の危機に…(C)Prabhat Kumar Verma/ZUMA Wire/共同通信イメージズ

 今月11日、WHO(世界保健機関)はインドで確認された「変異ウイルス」の監視強化を発表した。インドでは1日に36万人以上の新規感染者が確認されている。日本政府もインドとパキスタン、ネパールに過去2週間以内に滞在歴がある外国人は在留資格を持っていても再入国を14日から当分の間、原則停止にする。だが、感染はすでにじわりと広がっている。

【Q】「インド型」と呼ばれる「二重変異ウイルス」はどのようなものなのか

【A】「ウイルスの表面にある突起状のタンパク質(ウイルスのスパイクタンパク質)について、ロイシン(L)がアルギニン(R)に変異した『L452R』とグルタミン酸(E)がグルタミン(Q)に変異した『E484Q』という2つの変異が見られるのが特徴です。いずれも、新型コロナウイルスを中和する中和抗体や細胞性免疫を逃れる能力が高くなるため、ウイルスが体内で増殖しやすくなります」

 特にインド型のほかカリフォルニア型にも由来する「L452R」は、東京大学や熊本大学などの研究チームによれば、日本人の6割が持つ白血球の型「HLA(ヒト白血球抗原)―A24」がつくる免疫細胞をくぐり抜けるというから、気がかりだ。感染拡大の危険性が高まるとされている。

【Q】最近は「ベンガル型」といわれる「三重変異ウイルス」も出現しているが?

【A】「インドのベンガル地方で発見されたことから『ベンガル型』と呼ばれています。三重変異ウイルスなどもあります。ヒトの細胞にくっついて中和抗体から逃れる性質を持っています。南アフリカ型やブラジル型で見つかっている『E484K』の変異も有しているといわれていて、感染力は強いと報告があります」

【Q】変異はどこまで繰り返すのか

【A】「コロナウイルス(RNAウイルス)の構造は1本鎖で、複製する役割を果たす対の鎖を持っていないので、RNA同士を複製し、自らを増やし続けます。その過程で塩基配列(核酸を構成するRNAの構成要素の配列)のコピーミスが起これば、変異したRNAウイルスが出現します。そのため変異に際限はなく、理論上は四重、五重ウイルスが出現することも考えられます」

【Q】病原性の強いインド型の変異ウイルスにワクチンは効くのか

【A】「RNAウイルスは一度変異を起こすとそれを修復する遺伝子がないので、非常に高い確率で新しい変異ウイルスが出現するのが特徴。治療薬が確立していない現在、まずは、感染が少ないうちにPCR検査をし、拡大を抑えること。ワクチンの有効性を高めるには、二重、三重変異ウイルスのmRNAを従来型ワクチンに追加する方法が考えられます。または従来型のワクチンを打つ回数を2回から3回に増やすなどでも、十分な予防免疫が得られるでしょう」

奥田研爾

奥田研爾

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

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