名医が答える病気と体の悩み

食物アレルギーは治るのか…食べ続けたらどうなる?

内科認定医の山本悠太氏
内科認定医の山本悠太氏(提供写真)

 食物アレルギーは体の免疫システムによって発生します。血液中にIgE抗体がつくられることで、目や鼻、皮膚の血管が広がって粘膜がむくみ、かゆみやじんましん、場合によっては下痢や嘔吐などの症状が起こります。

 IgE抗体は、アトピー性皮膚炎などアレルギーを起こしやすい体質を持った人の体内に、食物タンパクの一部(食物アレルゲン)が入ることにより産生されます。通常2時間以内に反応が起きますが、即時型の場合は30分以内に症状が出現します。食事後の運動がきっかけでアレルギーを誘発させる「食物依存性運動誘発性アナフィラキシー」を起こすケースもありますから、注意が必要です。

 食物アレルギーの原因となる食品は、パッケージに掲載が義務づけられた「特定原材料表示」が参考になります。卵、乳、小麦、エビ、カニ、落花生、そばの7品目は比較的アレルギーが出やすく、とくにそばと落花生は摂取量に関係なく命に関わるような重篤な症状が出る場合があります。

 もちろん、当日の体調や年齢によっても症状が異なりますし、たとえば大豆製品は子供の頃にアトピーが出たのに大人になったら食べられるようになった人も少なくありません。食物アレルギーを疑う症状が出たら、皮膚科やアレルギー科で採血やパッチテストなどでアレルギー検査をして原因物質を特定しておきましょう。

 クリニックでは、「ちょっとかゆくなるけど好物なので食べちゃダメですか?」と聞かれることがあります。基本的にできる限り避けてほしいですが、「口の周りがかぶれるだけ」「皮膚がかゆい気がする」といった症状なら重症リスクは少ないといえます。逆に食べたときに「喉がいがいがする」「息苦しくなった」という症状が出た食品は絶対にやめてください。必ず吐いたり、下痢をする食品も重症化リスクがあります。

 食物アレルギーに対する根本治療としては、経口減感作療法があります。特に小児の食物アレルギーには効果的で、患者さんのアレルゲンとなる物質を少しずつ体内に入れることで耐性を付ける治療です。たとえば生のエビはアレルギーが出てもボイルなら食べられる場合、減感作療法によって完治するケースもあります。

 大人の方がどうしてもガマンできない場合は、医師に相談のうえで抗アレルギー薬(ヒスタミン剤)を内服しながら、食べて試してみるのはどうでしょうか。

▽山本悠太(やまもと・ゆうた) 2012年3月、慶応義塾大学医学部卒業・医師免許取得。14年3月「佐野厚生総合病院」で初期臨床研修修了。4月から慶応大学医学部内科学教室入局。16年4月に同内科学(消化器)教室入局・上部消化管班所属、機能性消化管疾患の臨床研究や診療に携わる。18年3月「慶応義塾大学病院」で後期臨床研修修了。19年8月「銀座まいにちクリニック」開業、院長を務める。

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