男性不妊症のすべて

良い精子を作るために改善するべき「4つの生活習慣」

(C)relish5/iStock

 不摂生な生活が精子の悪化と関係するのはご存じでしょうか? より良い精子を作るために改善すべき生活習慣を4つ挙げるとすると、次のようになります。

①過度のアルコール摂取
②喫煙
③密着する下着(ビキニやブリーフ)
④肥満(BMI【kg/m2】29以上)


 なぜ、生活習慣の改善が重要なのでしょうか。それは、男性不妊症の原因の多くは「特発性造精機能障害」と呼ばれる、原因不明な障害に起因することによります。あらかじめ原因が分かっていれば、その原因を治すことで改善が可能になります。しかし原因が分からない以上、まずは生活改善に取り組み、健康な体を取り戻すことが大切です。すると、精子も元気になるのです。

 まず、飲酒に関してはまったく飲んではいけないということではありません。1日のアルコール摂取量は20g程度にするのがいいでしょう。ビール500ml、日本酒1合、ワイングラス2杯程度に相当します。

■「電子タバコ」も精子には良くない

 次に喫煙です。喫煙は精子にとって百害あって一利なしです。最近、よく外来で聞かれるのは「電子タバコはどうですか?」という質問です。たしかに、煙が出るタイプの紙巻きタバコから電子タバコに変えた場合、健康にいいイメージがありますが、電子タバコも精子にとっては良くありません。そもそもニコチンが精子には良くないのです。喫煙は酸化ストレスが精子に影響します。酸化ストレスとは体内の錆のようなものです。精子のためにもすぐに禁煙しましょう。

 3番目は密着する下着についてです。これは、精巣の温度と関係しています。ビキニやブリーフ型の下着は、ピッタリとしているので陰嚢が締め付けられる形になります。この締め付け具合を心地よく思っている男性もいるとは思いますが、妊娠を希望する間は控えてください。精子のためにトランクス型に変えましょう。下着と陰嚢の間に隙間を与えることで、精巣の温度上昇を防げます。通気性を良くして、精巣の温度上昇に注意してください。

■肥満は精巣の温度を上げて精子の元気を奪う

 最後は、外来診察で最も多くみられる肥満の問題です。肥満があると、下腹部や太ももの間に陰嚢が挟まれる形になり、精巣の温度が上昇しやすくなります。また、肥満は酸化ストレスの上昇にも関係します。循環器系や代謝系に影響するのが原因です。

 また、肥満は高血圧、脂質異常症、心血管疾患、糖尿病などの生活習慣病のリスク因子になります。適正体重は「BMI 22」といわれています。有酸素運動を中心とした運動をして適正体重を目指しましょう。肥満は精子にとって大敵なのです。

 精子は自分自身の生活習慣を変えることで質を高めることができます。「元気な精子」のために生活改善を心掛けてください。

小林秀行

小林秀行

1975年、東京都生まれ。2000年東邦大学医学部を卒業。卒後研修終了後に東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座免疫学分野に進学。医学博士を取得。ペンシルバニア大学獣医学部にてリサーチアソシエイト。その後、東邦大学医学部泌尿器科学講座に復帰。2014年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は男性不妊症。noteにてブログ「Blue-男性不妊症について」を配信中。

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