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米国の新型コロナ予防の未来に影を落とすワクチンの政治化

ニューヨークでは日常が戻りつつある
ニューヨークでは日常が戻りつつある

 ニューヨークは6月15日の時点で1度でもワクチンを受けた成人が7割を超えた14番目の州となり、ほとんどの場所でのマスク着用義務やソーシャルディスタンスが解除されました。

 ニューヨークのランドマークのひとつ、エンパイアステートビルでは地上80階の展望台で接種が受けられるようになり、不便な地域に住む人のためにワクチンバスも回っています。懸賞金からフリーチケットまで、あの手この手で接種率を上げようとしている州もあります。

 しかしその一方で、接種がかなり遅れている州もあります。

 特に、ミシシッピ、ルイジアナ、アラバマなど共和党が優勢な南部の州では、1度でも接種した人がまだ5割に達していません。

 カイザー・ファミリー基金の調べによれば、民主党支持者の8割は最低1回の接種を受けているのに、共和党支持者は5割に満たず、27%は今後も受けない方針。民主党でワクチンを受けないとしている人の3%を大きく上回っています。

 マスクの政治化についてお話しした時にも触れましたが、共和党支持者は予防接種もマスク着用も個人の自由であるべきで、押し付けられるものではないという考え方が強いのが特色です。

 さらに、共和党の3分の1を占めるのはキリスト教福音派で、民主党の6%に比べ圧倒的に多く、彼らが科学に対し懐疑的であるからという見方もされています。 

 また、共和党の57%が大卒以下(民主党は30%)で、多くがポピュリスト、つまり政治エリートや科学者の言うことは信用しないというのもあるようです。

 共和党の過半数が「2020年のトランプ敗北は“盗まれた選挙”のため」といまだに信じていますが、それと同様に、マスクに続いてワクチンも政治化し分断しているのです。

 ワクチン接種率が低い地域では再び感染率が上がってきており、集団免疫の達成だけでなくコロナ予防の未来に影を落としています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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