Dr.中川 がんサバイバーの知恵

だいたひかるさんは順調 がんと不妊治療を両立させる女性のプランは3つ

だいたひかるさん
だいたひかるさん(C)日刊ゲンダイ

 晩婚化が進んでいるだけに、参考になるかもしれません。お笑いタレントのだいたひかるさん(46)は乳がんの治療を中断して不妊治療で子供を授かり、赤ちゃんが順調に成長していることをブログで報告。9週目の妊娠検査についてこう記しています。

「お陰様で、2センチに成長して…心拍も鯉の口みたいにパクパク動いていました」

 赤ちゃんの成長が順調なのは何よりです。

 ブログなどによると、だいたさんは2013年に結婚し、その翌年から不妊治療をスタート。当時は「1、2カ月病院にかかれば、子供が出来ると思っていた」そうですが、16年に乳がんの発覚で不妊治療を中断。右の乳房を全摘したものの、19年に再発し、放射線治療を受けています。

 その後は、抗がん剤やホルモン治療などを受けられたようですが、昨年10月に中断。今年5月には、40歳のときに凍結していた受精卵を子宮に移植して妊娠に至ったそうです。

 男性も女性も結婚年齢が上昇。30代、40代での結婚は珍しくありません。皮肉なことに、その年代は乳がんや子宮がんが発症しやすいことも分かっていますから、妊娠を希望される夫婦にとっては、がんの治療と妊娠の両立が大きなテーマ。だいたさんのような対応が必要になることがあるのです。

 抗がん剤や放射線の治療を受けると、精巣や卵巣の機能が低下するため、妊娠できなくなるリスクがあります。男女ともにリスクがあり、それを回避することが重要なのです。

 男性の場合は、採取した精子を液体窒素で凍結して保存する方法のみですが、女性は3つあります。卵子を採取して凍結する方法、卵子とパートナーの精子を受精させて受精卵として凍結する方法、そして片側の卵巣を摘出して凍結する方法です。

 既婚者やパートナーがいるケースでは、だいたさんのように受精卵を凍結する方法が確実でしょう。受精卵の方が、卵子凍結より凍結のストレスに強く、融解時の回復率は95%。卵子凍結の場合は80%程度で、受精卵凍結の方が、卵子凍結より将来の妊娠確率は上がります。

 ただ、いずれの凍結を選ぶかは、治療までの時間との兼ね合いが重要です。卵子や受精卵の凍結には一般に10日程度かかります。手術前に抗がん剤治療が必要なケースやがんの進行が早く診断からすぐに抗がん剤治療が必要なケースなどは、受精卵などでの凍結が難しく、卵巣凍結が選択されるのです。

 ですから治療法の検討と同様に、妊娠の可能性を守るためにどの方法をチョイスするか。主治医やパートナーとよく考えることが大切です。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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