役に立つオモシロ医学論文

誕生日のお祝いが新型コロナウイルス家族感染の原因に? 米国で論文

写真はイメージ
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 新型コロナウイルスの感染拡大を抑止するため、公共施設はもちろん、職場などでもさまざまな感染対策が実施されていると思います。しかし他方で、家族や親族、親しい友人だけで行われる自宅での小さなイベントや会食では、感染予防に対する意識が低下することも多いでしょう。

 誕生日会の開催と新型コロナウイルスの感染リスクの関連を検討した研究論文が、米国医師会が発行している内科専門誌に2021年6月21日付で掲載されました。

 この研究では2020年1月1日から11月8日までの間に、米国の民間保険に加入していた290万世帯が解析対象となりました。各世帯における家族の誕生日を特定し、新型コロナウイルス感染症について、診断を受ける2週間前に誕生日を迎えた家族がいる世帯と、そうでない世帯が比較されています。なお、ウイルスの流行状況も感染リスクに大きな影響を与えることが想定されるため、地域ごとに解析が実施されました。

 その結果、1万人当たりの新型コロナウイルス感染症の診断件数は、新型コロナウイルス感染症が流行している地域において、誕生日を迎えた家族がいない世帯に比べると、誕生日を迎えた家族がいる世帯で、8・6件多いことが示されました。この診断数の増加は、大人の誕生日では5・8人だったのに対して、子供の誕生日では15・8人でした。

 子供の誕生日は家族のほか、親族や親しい友人を自宅に招いてお祝いすることも多いと思います。しかしこの研究では、たとえ小規模なイベントや会食でも、感染リスクの増加につながる可能性が示されています。ワクチン接種が普及し、感染者数が大きく減少するまでは、できる限り人が集まる機会を避けた方がいいかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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