今年こそ水虫を徹底して治したい ポイントは 「爪」にあり

爪白癬の治療は早ければ早い方が良い
爪白癬の治療は早ければ早い方が良い

「たかが水虫」と思っている人もいるだろう。しかし、放置すると家族中に感染させかねない。爪の変形が生じると高齢者では転倒のリスクが高まる。糖尿病患者では水虫は細菌感染の危険因子となり潰瘍や壊疽が進行して足を切断しなければならないこともある。

 この水虫、足白癬(足の水虫)と爪白癬(爪の水虫)があるが、治療薬が異なる。

「足白癬は市販薬でも治せます。しかし、爪白癬の治療薬は市販されていません。病院で処方してもらうしかない。もし薬局で『爪水虫の薬をください』と言って市販薬を出されたら、それは効かない薬です」(埼玉医科大総合医療センター皮膚科・福田知雄教授=以下同)

 爪白癬は厄介な病気だ。爪で白癬菌がガードされているため治りにくく、治療開始が遅れるほど治りにくい。

 また爪白癬は、白癬菌の巣のようなもの。足白癬が薬で良くなっても、爪白癬がそのままなら“巣”から白癬菌が菌糸を伸ばして足の皮膚に感染、足白癬を繰り返す。

 さらに、稀ではあるもののお尻や背中などに白癬菌が感染し、“カビ”が生えることも。

「爪白癬が進行すれば、爪が白く厚く変形し、見た目が悪くなり、体を支えてバランスを取るという足の爪の機能を十分に果たせなくなります」

 足白癬、爪白癬ともに高齢者ほど患者が多いが、爪白癬の悪化で冒頭のように転倒リスクが増せば寝たきりや認知症につながりやすくなる。

■最新治療薬の飲み薬の完治率は塗り薬の4倍高い

 繰り返しになるが、爪白癬の治療開始は早ければ早いほどいい。塗り薬と飲み薬がある。

「現在、塗り薬は2種類、飲み薬は3種類あります。塗り薬の場合、1年間塗り続けての完治率は15%ほど。一方、飲み薬は、2018年に承認された最新治療薬で約60%です。『これは塗り薬で対処できる』という一部の例を除き、私は飲み薬を第1選択にしています」

 患者の大半は高齢者で、多くは複数の薬を飲んでいるため、飲み薬の増加に抵抗を覚える人もいる。しかし飲み薬のメリットと、爪白癬をきちんと治せないことの弊害を説明すると、ほぼ全員が飲み薬での治療に納得するという。

「ただ、その説明に時間を要することから、飲み薬という選択肢を最初から提示しない医師も少なくありません。治療に時間がかかると患者さんのドロップアウト率が高まります。飲み薬を中心に、塗り薬とうまく使い分けての治療がよいと思います。患者さんが心配する副作用も、医師がしっかり管理して処方すれば、ほとんどの人は問題ありません」

 爪白癬の治療の流れはこうだ。「爪が白や黄色に濁る」「爪が厚くなる」「爪がボロボロになる」が代表的な爪白癬の症状だが、実際は人によって症状がまちまちな上、類似の症状を呈する別の爪の疾患もあり、ベテラン皮膚科医でも見た目だけで判断できないケースがよくある。

「顕微鏡検査や真菌培養で爪に白癬菌がいるか、確認をしてから治療に入ります」

 前述の18年承認の最新治療薬「ホスラブコナゾール」は12週間服用。ただし、足の爪はすべて生え替わるのに1年以上かかるので、薬を飲み終えた時点では爪の白く変形した部分はまだ残っている。つまり、完全に白癬菌が爪からいなくなったか(=完治したか)は、服用期間終了時には分からない。

「患者さんにはその後も受診してもらい、爪白癬が完治したかを見た目でもきれいになるまで見守ります。爪白癬も足白癬も、白癬菌が少しでも残っていれば、再燃・再発を繰り返します。再燃・再発しそうだと判断した場合は、同じ飲み薬を再度服用してもらうか、あるいは別の飲み薬を用いるか、あるいは塗り薬に切り替えるか、患者さんの症状に応じて次のステップに移ります」

 薬を飲み始めた当初は「本当に効くのか」と半信半疑の患者も、時間の経過とともにきれいになっていく爪を見て治療のモチベーションが上がる人も珍しくない。

 足白癬は成人の5人に1人、爪白癬は10人に1人が感染しているといわれている。気付いていないだけで、あなたも感染しているかもしれない。

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