コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

口腔がんの早期発見を可能にする「AI診断支援システム」

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写真はイメージ(C)PIXTA

 口の中の粘膜や舌、歯茎などにできる「口腔がん」は、初期の病態では「口内炎」と似ており、専門知識を持つ医師や歯科医師でないと発見が遅れるケースがある。日本頭頚部癌学会の2015年のデータでは、診断時点でステージⅢ、Ⅳの進行がんで見つかる割合が54%と報告されている。

 そんな口腔がんをAI(人工知能)で判別するシステムの開発が、大阪大学大学院歯学研究科のチームと米国大手IT企業であるNVIDIA(エヌビディア)と共同で進められている。研究代表者である大阪大学大学院歯学研究科・口腔外科学第一教室の平岡慎一郎助教が言う。

「口内炎は、口腔外科だけでなく内科、耳鼻咽喉科、一般歯科医院などでも診療します。しかし、国内の口腔がんの年間発症数は推定8000~9000件と少なく、専門医でないと過小評価されてしまう傾向があります。また、初期の口腔がんは痛みがなく患者さん自身も無痛の口内炎として放置されやすい。それでAIによって簡便に判別できるシステムをつくり、早期発見・早期治療につなげたいと、2017年から本格的に研究に着手しました」

 AIには、大量の画像から自動的に特徴などを抽出・分析する「ディープラーニング(深層学習)」の技術を応用。大阪大学歯学部の症例をはじめ、全国6施設の共同研究機関から現時点で約4万枚の口腔粘膜疾患画像を収集して、診断情報のラベルを付与したデジタルデータを使用。これは同分野の研究において、世界屈指の規模を誇るデータ量になる。

 研究機関としては、「悪性腫瘍」「口内炎」「白板症」「良性腫瘍」の4疾患を判別するAIの作成を進めており、実用化に向けては、歯科開業医などの1次医療機関のニーズを踏まえた上で、AIの仕様を決定するとのことだ。

「すでに口腔粘膜疾患の判別において、非常に高い精度を達成しています。特に『悪性腫瘍』と『口内炎』の判別において学習モデルの精度は、今年6月に開催された日本頭頚部癌学会のシンポジウムで『感度、特異度ともに95%以上』と公表しています」

 この口腔がんのAI診断支援システムは、1次医療機関向けとして主に一般歯科医院が利用するシステムになる。近い将来の実用化を目指しているという。

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