今夏のコロナ急拡大は「デルタ株」だけが原因なのか? 新規感染者は1カ月で5.9倍へ

感染者が急激に増えているのはなぜか
感染者が急激に増えているのはなぜか(C)日刊ゲンダイ

 日本の新型コロナウイルス感染症が急拡大している。8月22日の1日当たりの7日間平均新規感染者数は2万2488人、1週間前の1万6514人から36%増。1カ月前の3823人からみると実に5.9倍である。しかも、検査を受けていない潜在的な感染者が増えているとみられており、実数はもっと多いともいわれている。

 なぜこれほど急激に感染者が増えているのか。本当に感染力の強い「デルタ株」が従来株と置き換わったことからなのか。

 デルタ株の感染力は確かに強い。米国疾病対策センター(CDC)の分析によると、デルタ株は1人の感染者が平均8~9人にうつすという。これは水疱瘡と同じで、同じ部屋にいるだけで感染するレベル。従来株のそれは2.5人だから感染力がいかに強いかがわかる。

 しかし、本当に感染拡大の主犯はデルタ株なのか? 感染者の行動に問題はなかったのか?

 そこでデルタ株が急激に増える前の感染者の行動とデルタ株が流行してからの感染者の行動を比べてみた。

 まずはデルタ株が大流行する前のデータとして「感染経路不明な新型コロナウイルス感染症新規入院患者の感染経路に関する記述の結果報告」について見てみたい。

 これは、5月22日~6月29日に国立国際医療研究センター病院に入院した20歳以上の感染者のうち、感染経路が明確であった、意思疎通ができないなどの患者を除いた22人(男性17人、女性5人、年齢の中央値52.5歳、外国籍3人)の患者の発症14日前から前日までの行動歴や接触歴を聞き取り調査した結果だ。

 それによると従来から感染リスクが高いとされる場面は24場面。そのうち88%にあたる21場面は飲食関係であり、92%となる22場面はマスクを外していたという。

 とくに感染リスクが高いとされる発症7~4日前で従来から感染リスクが高いとされる場面でマスクもしていなかったのは次の通り。

 ラーメン屋3、そば屋2、中華料理店2、友人と居酒屋1、和定食屋1、会社の食堂1、友人と外食1、ひとりで外食1、宅配サービスを頼んで4人で食事1、ボーカルのいるコンサートに参加1、コンビニ1、仕事後に同僚と1~2時間会話(同僚が陽性)3、出勤2、電車で移動1、徒歩で移動1、歯科処置1、理容院1だった。

■危機意識の欠如は情報不足が原因か

 では、デルタ株が従来株と置き換わったとみられる8月16~18日での「感染者の行動歴」はどうか。岐阜県公表のデータを並べてみる。

▼50代女性は愛知県の実家に親族10人程度が集まり、お墓参り後に一緒に食事。

▼30代女性は九州の実家に帰省。他県からも親族が帰省し、親族5人で会食。後に他県から来た親族の陽性が判明。

▼20代男性は発症前に県内の実家に帰省し、友人5人と居酒屋をはしごし飲み歩いた。

▼10代男性は実家のある関東へ帰省。帰省先で友人と数日にわたって遊興施設や観光地を訪問。

▼20代女性は発症前に複数回、友人親子の家へ家族で遊びに行く。友人宅ではマスクなし。また、友人2家族と計11人でリゾート施設でバーベキューを楽しんだ。

▼20代男性は発症前に夫婦で結婚式へ参加。その後の2次会から4次会まで参加。

▼10代男性は発症前に友人を自宅に呼んで4人で食事し麻雀。後に会食及び麻雀のメンバーに感染者がいたことが判明。

▼20代男性は38度以上の発熱があったにもかかわらず、友人と居酒屋で飲食……など。

 2つの「感染者の行動歴」を見る限り、感染経路に大きな変化はない。いずれも感染した人には問題行動があったようにも思える。弘邦医院の林雅之院長が言う。

「デルタ株により10代以下も感染するようになったのは大きな変化ですが、感染者はそれなりに感染リスクの高い行動を取っているケースが多い。とくに若い人は“新型コロナは若い人に感染しづらく、発症しにくい”との新型コロナ流行初期の情報がインプットされていて、それがアップデートされていないことが“私は大丈夫”との過信につながり、感染者を増やしている。今の若者は新聞やネット情報もよほど興味がなければ読んだり見たりしません。情報過多に見えて驚くほど情報不足です。ですから、感染を防ぐには学校などが感染症の専門家を招いて新型コロナに関する正確な情報を発信したり、親御さんや周りの大人が積極的に新型コロナの情報をアップデートしてあげることが大切なのではないでしょうか」

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