新型コロナ 重症化を防ぐ最新知識

子供とその親世代のコロナ感染が急増する今こそ学校を再開し議論を 公衆衛生の専門医が提言

感染防止のため前後左右を空けて着席する児童
感染防止のため前後左右を空けて着席する児童(C)共同通信社

 新型コロナウイルス感染症に罹患する若者が増えているというが、本当だろうか? 東京都の年代別の新規感染者割合の推移(4月27日~5月3日→8月10~16日)を見ると以下のようになる。

 90歳以上(1.2%→0.4%)、80代(2.6%→1.0%)、70代(4.3%→1.3%)、60代(5.7%→3.2%)、50代(12.6%→11.8%)、40代(16.7%→16.5%)、30代(18.3%→20.7%)、20代(27.1%→30.8%)、10代(7.8%→9.3%)、10歳未満(3.7%→5.0%)。

 これを見る限り、ワクチン接種が先行した60代以上の感染者が大きく減り、50代以下の感染者が増えている。とりわけ気になるのは10代以下の子供たちと、その親世代の感染が増えていること。夏休み以降の子供の学校をどう考えればいいのか?

 公衆衛生の専門家でもある岩室紳也医師が言う。

「大事なのは学校と家庭とどちらが新型コロナを防ぐ力があるか、です。家庭ごとに新型コロナへの感染予防対策の意識が異なり、必ずしも子供が家庭にいることが安全とは言えないのではないでしょうか。学校は少なくともどんな感染対策をしたらいいか、わかっています。しかし、家庭では必ずしもそうとは限らない。私が聞いた例では、感染の自覚のない娘さんがマスクなしで料理を作り、それを食べなかった長男以外の家族全員がうつったそうです。そういう事例を聞くと、改めて感染対策の基本の大切さを実感します。ですから、いまは子供を学校に通わせることで子供に感染対策の基本の徹底を意識させると同時に、20~40代が中心の保護者に対して子供経由で感染対策を啓発する。その意味でも私は通常通り学校授業を行うべきだと考えています」

■デルタ株のせいにして感染対策を見失ってはいけない

 とはいえ、感染力の強いデルタ株の前では従来の感染対策は役に立たないのではないか。

「私はそうは思いません。感染力が強いからといって感染経路が変わったわけではありません」

 感染力が強力なデルタ株に感染した人はより早い時期により多くのウイルスを吐き出し、他人を感染させやすいといわれる。依然として感染リスクが高いのは飛沫やエアロゾルを共有する3密(密閉空間、密集場所、密接場面)や、マスクを外して飛沫が飛びやすくなる調理・飲食の場で感染予防策が徹底されていないことが問題だ。

「日本ではすでにエアロゾル対策という形で実質的な“空気感染”対策は進めてきましたが、空気感染対策の基本は換気というより正確にはウイルスの拡散と空間からの排出です。密閉空間ではなくても、風上に感染している人がいれば風下の人は感染するリスクがあります。デルタ株が登場したからといって感染経路が変わったわけではないので、きちんと感染予防策を徹底すればそれなりに感染を制御できるはずです」

 では、なぜ感染爆発が起きたのか? 感染経路を断つ努力がコロナ慣れで以前よりなされなくなったうえ、酷暑でクーラーが多く使われたことと関係があるのではないか、と岩室医師は言う。

「感染者から吐き出されるウイルスを含む飛沫やエアロゾルは、乾燥した空気の中ではウイルスの周囲の水蒸気が飛ばされた飛沫核となりより長く漂います。つまり、空気を乾燥させるクーラーを使う夏は、より空気を外に排出することを意識した換気・排気に気をつけなければならなかった。なのにそれが徹底されてなかった。いま必要なのはもう一度正しい感染対策とは何か、それをどう伝えるかを考え、それを皆で共有することです」

 そのためには厚労省や一部の専門家だけに任せるのではなく、国家レベルのプロジェクトチームで討議し、伝える努力をすることではないか。

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