コロナのストレス不調を改善する2大ポイント 自律神経研究の第一人者が指南

マスクで呼吸が浅くなりがち
マスクで呼吸が浅くなりがち(C)日刊ゲンダイ

 相次ぐ緊急事態宣言、感染力が強いデルタ株の流行、若い年代では予約が取りづらいワクチン……。コロナによるストレスの蓄積で、自律神経に支障をきたしている人が少なくない。自律神経を整えるために何を知っておくべきか? 自律神経研究の第一人者である順天堂大学医学部教授の小林弘幸医師に話を聞いた。

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「外来診療で、熱や呼吸の苦しさを訴える患者さんが増えています。しかし熱を測ると平熱で、酸素飽和度も正常値。感染症への恐怖、仕事や経済的な不安、人と交流できない孤独などで自律神経が乱れ、異変をきたしているのです。これでは免疫力も低下し、感染しやすい体をつくり出しているようなものです」

 自律神経は自分の意思とは無関係に24時間働き続けている神経で、活動時に優位な交感神経と、安静時に優位な副交感神経から成り立つ。これらのバランスが崩れると、さまざまな心身の症状が表れる。たとえば、疲れやすさ、めまい、のぼせ、冷え、頭痛、耳鳴り、動悸、関節痛、便秘、下痢、口や喉の渇き、発汗、気分の落ち込み、イライラ、不眠、不安、集中力の低下などだ。

 前述の通り、免疫力にも大いに関係する。

「自律神経のバランスが乱れると、免疫の中心を担う白血球のバランスが崩れることが近年の研究で分かっています」

 白血球には、細菌などを処理する顆粒球、ウイルスなどを処理するリンパ球があり、交感神経優位では顆粒球が増え、副交感神経優位ではリンパ球が増える。

「ストレス過多の現在、交感神経が過剰に優位になりやすい。すると顆粒球が増えすぎ、健康維持に必要な常在菌まで処理してしまい、免疫力が下がるのです」

 一方、副交感神経が過剰に優位になっても問題だ。リンパ球が増えすぎ、わずかな抗原にも反応し、アレルギーを起こしやすくなる。つまり、顆粒球、リンパ球とも「ちょうど良い」働きをするには、自律神経のバランスを整えることが重要なのだ。

■睡眠の質を高める効果も

 2大ポイントが「呼吸」と「食事」だ。

「まず呼吸は、自律神経と密接な関係を持っています。呼吸が速く浅くなると自律神経が乱れて血流が悪くなり、腸内機能が悪化し、メンタルヘルスの不調が生じる。ゆっくりと深い呼吸を心掛ければ、自律神経が整い、血流が良くなり、腸内機能が改善されます」

 マスクをつけていたり、リモートワークで猫背で一日の大半を座りっぱなしで過ごすと、呼吸が浅くなりがちだ。「密」でない、感染リスクが低い場所では、マスクを外し、深い深呼吸を。

 次に食事だが、特に朝食が大事。副交感神経から交感神経へスムーズに切り替えるスイッチの役割を持つからだ。

「睡眠中は副交感神経が優位。起きて食事が胃に入ると、それが刺激になって交感神経優位になり、蠕動運動が活発化。夜に消化吸収を済ませていた老廃物をスムーズに排出する助けとなります。ホルモンの分泌も良くし、心身のパフォーマンスを上げます。朝食抜きは改め、バナナでもコンビニおにぎりでもいいので、何かを口にする習慣を身に付けましょう」

 この時、太陽の光をしっかり浴びることも、自律神経の切り替えに不可欠だ。

 夕食は、できれば夜9時までに終わらせる。

「夕食の時間は早いほど副交感神経が優位になりやすく、質の高い睡眠を得られます。夕食後はスマートフォンやパソコンを極力見ないようにすることで、より睡眠の質を高めます」

 意識的に深呼吸を行うこと、朝食を取り、夕食は早めに終わらせること。コロナに負けないために、早速今日から始めようではないか。

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