デルタ株が猛威を振るうアメリカでは1日15万人以上が感染していますが、その4人に1人がワクチン完了者、つまり「ブレークスルー感染」というデータがCDC(米疾病対策センター)から発表され、驚きと同時に「やはり」という声も出ています。
これはロサンゼルス市で今年5月から7月に採取された16歳以上の陽性者4万3000人のデータを分析したものです。ニューヨーク在住の筆者の周りにもブレークスルー感染者が出始め、どのくらいの割合で感染しているのだろうと疑問に思っていた矢先のタイムリーな発表でした。
それによれば、ブレークスルー感染者のほとんどが症状は軽く、入院が必要になった人は3.2%。ワクチン未接種者と比較分析すると、ワクチン未接種者が入院する確率は、接種者より29倍高いという結果でした。つまり、ワクチンを打っていても感染はするが、入院や重症化の確率は非常に低い。打たないよりは打ったほうがずっといいと、数字で証明された形になります。
デルタ株の感染はアメリカ南部の接種率が低い地域を中心に拡大していますが、こうした地域の入院患者の約9割はワクチン未接種という報告もあり、それを裏付けたことにもなります。
アメリカではワクチン懐疑論者をはじめ、政治・宗教的な理由で接種を受けない人が後を絶ちません。南部を中心に接種が進まず、それがデルタ株の蔓延を招いたと考えられています。しかし、危機的な感染拡大を受けて接種を受ける人が増え始めたため、1度でも接種を受けた成人の割合は73%まで来ています。
ブレークスルー感染の状況を受け、9月から3回目のワクチン接種「ブースターショット」がスタート。デルタ株の感染拡大を抑えたいところですが、このままでは今年中にさらに10万人が亡くなるとの試算もあり、悲観的な声が少なくありません。
一方、ワクチン未接種者の重症化で医療崩壊に追い込まれた多くの病院では、疲弊した看護師やスタッフらが「ワクチンで防げたはずの重症化なのに」と、怒りと苛立ちをにじませています。
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