新型コロナ 重症化を防ぐ最新知識

10代のコロナ感染者が急増 子供へのワクチン接種「メリット」と「デメリット」を考える

かかりつけ医等に相談しながら慎重に判断を
かかりつけ医等に相談しながら慎重に判断を(C)共同通信社

 デルタ株などの変異株は従来株に比べて感染しやすく重症化しやすいとはいえ、大人に比べて軽症だから騒ぐ必要はないのではないか。そう考えている人も多いのではないか。しかし、既に10代の感染者数は15万人を超え、10代の死者も1人報告された。入院患者数も増えている。次の流行期に向けて子供のワクチン接種をどう考えればいいのか。

 参考になるのは9月4日時点で接種対象5万6227人のうち4万9220人が2回目接種を終えている福島県南相馬市のケースだ。

 対象となる中学生(13~15歳)1140人のうち949人が2回目接種を完了。2回目接種率は83.2%となった。高校生(16~18歳)の2回目接種完了者は対象となる1458人のうち1205人。2回目接種率は82.6%となっている。

 その効果はどうか。同市の10代の新規感染者数は8月に4人出たものの9月8日までは0人。ワクチン未接種の10歳未満が8月の0人から9月に4人と増えているのとは対照的だ。

 南相馬市(人口5万9018人)と規模がほぼ同じ福島県伊達市(5万8782人)の10代の新規感染者数は、8月7人、9月は7日発表分までで2人だった。

 ちなみにファイザー社製ワクチンの12~15歳の小児への有効性については1131人にワクチン、1129人に偽薬を3週間間隔で2回接種した7日後に発症状況を比べた治験の結果が公表されている。ワクチン群で発症した小児は0人、偽薬群は16人が発症した。ワクチン効果は100%と推定された。

■合併症や後遺症のリスクは?

 ワクチン接種のメリットのひとつは感染リスクが下がることで感染時の合併症リスクも下げられる、ということ。

 米国疾病対策センター(CDC)が報告した新型コロナウイルス感染に合併する可能性がある疾患は多い順に、「急性腎障害」(10万人中125.4人)、「肺塞栓」(同61.7人)、「深部静脈血栓症」(同43人)、「心筋梗塞」(同25.1人)。ただし、これらの疾患は子供には少ない。大人ほどのメリットはないだろう。

 問題は心筋炎だ。感染者の0.146%に認められるとCDCは先月31日に声明を出した。通常の心筋炎の発症率は0.009%のため、新型コロナウイルス感染は心筋炎の発症率を16倍高くする可能性がある。一般的な心筋炎に比べて16歳から39歳の感染者は7倍増加するとされるが、16歳未満と75歳以上ではそれが30倍以上高くなると報告されている。

 後遺症リスクはどうか。

 昨年3月から11月までに新型コロナを発症した、18歳以下の患者129人(平均年齢11歳、48.1%が女性)を追跡したイタリアの研究によると、不眠(18.6%)、胸痛や胸部圧迫感(14.7%)、鼻づまりや鼻水(12.4%)、疲労感(10.8%)、筋肉痛(10.1%)、頭痛(10.1%)、関節痛(6.9%)、集中力の低下(10.1%)などの症状があり、4カ月後では1種類以上の後遺症に悩む人が半数以上いたと報告している。

 これらの後遺症リスクもワクチン接種で下がるとしたらそれはメリットだが、一方で気になるのが副反応だ。

 相馬市の高校生に対する副反応調査では接種部位の痛み(1回目73.3%、2回目71.7%)、疲労感(28.6%、59.7%)、頭痛(20.5%、56.6%)、37.5度以上の発熱(11.8%、56.0%)が目立ったが、数日で消失したという。

 南相馬市では報告されていないが、モデルナ社製で12~39歳の男性を中心に心筋炎の副反応が報告されている。

 公表されたデータではワクチン接種のメリットの方がデメリットを上回るように思えるが、個々人により条件が異なるためどうすべきかは一概には言えない。子供への接種はかかりつけ医等に相談しながら慎重に判断することだ。

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