新型コロナワクチンの疑問に答える

植物由来ワクチンはmRNAワクチンをためらう人にとって朗報か

田辺三菱製薬本社
田辺三菱製薬本社(C)共同通信社

 田辺三菱製薬は、2023年3月までに植物由来のヒト向け新型コロナウイルスワクチンの実用化を目指している。タバコ属の植物を使っていて、世界初。10月から国内で臨床試験(治験)を始めると発表した。mRNAワクチンの接種をためらう人にとっては朗報となるのか。

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【Q】植物由来のワクチンとしては、カナダのメディカゴ社が開発する「VLPワクチン」ではウイルスそのものは使わない。菜っ葉やピーマン、トマトなどの野菜を精製し、ウイルスの表面に出ている突起の「スパイクタンパク質」を人工的に合成して人体に投与、ウイルス抗体は体内でつくられる仕組みだ。こうした植物由来の場合、食物や花粉アレルギーの人は大丈夫か?

【A】「まだ第3相の臨床試験の結果は得られていませんが、十分満足できる効果が期待されています。注射による接種だと思いますが、植物由来なら経鼻や経口投与も可能なので、そうなれば素晴らしいですね。現在、カナダや米国、英国などで実施されている治験では、重度の副反応は確認されていないといわれています。薬品によるアレルギー体質の方はもちろん、植物、花粉アレルギーの方も特段問題ないと思います。もっとも、いずれも副反応が起これば抗アレルギー剤で対応します」

 植物性のアレルギー体質の場合は、mRNAやその他の作製方法のワクチンの方がいい場合もあるので、まずはかかりつけ医と相談だ。

契約締結した武田薬品工業
契約締結した武田薬品工業(C)日刊ゲンダイ

【Q】一方、米ノババックス製の組み換えタンパクワクチンも話題だ。厚労省は、早ければ22年から供給を受ける契約を武田薬品工業との間で締結した。このワクチンの特徴は? ブースター接種で使っても効果あるのか?

【A】「これは蚕を使って組み換えたタンパクを作製、精製したもので、ウイルスのスパイクタンパクを抗原としています。一般的にmRNAワクチンより免疫原性はやや弱いが、ブースター接種に使うのはより高い効果が見られるのではないかと考えています。同じmRNAワクチンのみを打っていると抗体に限度があるかもしれないが、合成したスパイクタンパクを打つことで、体内の免疫も強固に得られる可能性があります。単独ならmRNAよりも、免疫効果は強くありません」

【Q】政府は希望接種を10~11月で終わるとしている。そのあと受けたくなったらどうするのか。民間の病院ならいつでも受けられるのか?

【A】「私の所属する医師会には11月までに残ったワクチンを打ち終えるように言われています。今後、必要に迫られれば届ける可能性はあるが、今のところ病院のある神奈川県では11月以降の予定は決まっていません。予約を無責任に取らないように通達が来ており、私自身は抗議しているところです。まだ3割ほどが打ってなく、悩んでいる方も供給がなくなれば困ってしまう。11月までと区切ってしまう、政府の対応は疑問です。民間の病院ならいつでも受けられるというのは、今のところ、そのような体制はできていません」

奥田研爾

奥田研爾

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

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