コロナ第6波に備える最新知識

「沈黙の臓器」のダメージを知るにはどうしたらいいのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回、第6波が来る前に眼科を受診して失明リスクのある病気をケアする重要性を紹介した。今回は新型コロナ感染で死亡リスクが最も高い腎臓病について考えたい。沈黙の臓器と呼ばれ、末期にならないと自覚症状が出づらい腎臓のダメージを知る方法を腎臓や高血圧などの専門医資格を持つ「松尾内科クリニック」(東京・桜新町)の松尾孝俊院長に聞いた。

 厚労省が新型コロナ感染の重症化リスクの高い9つのリスク(慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、がん、免疫抑制、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙)について分析したところ、基礎疾患を持つ人はまったくない人に比べて死亡率が5・6倍高いことがわかった。基礎疾患別の致死率を見ると慢性腎臓病は14%と飛び抜けて高く、65歳以上だと18%に上った。

 調査は2021年4月1日~6月30日の、発生届ベースの新型コロナ感染陽性者32万2007人のデータによる。

「腎臓には100万個といわれる『糸球体』(毛細血管でできた微細な球状の組織)があり、大量の血液をろ過し、尿のもとを作ります。糸球体のろ過機能が低下すると老廃物や余分な水分がたまり、むくみやだるさなどが起こり、やがて肺や心臓などの病気を引き起こします。慢性腎臓病が進行すると人工透析で老廃物などを体外に排出する必要があります」

 なぜ、慢性腎臓病の人が新型コロナに感染すると死亡率が高くなるのか?

 ひとつは慢性腎臓病の人はウイルスに感染しやすいことが挙げられる。腎機能が低下すると本来は尿中に排泄されるべき老廃物などが血液中に蓄積される。これを尿毒症という。そうなると全身の免疫細胞の働きが低下して感染しやすくなる。

「しかも慢性腎臓病は糖尿病から発症するケースが多い。糖尿病になると免疫力が低下することがわかっています」

 もうひとつの理由は慢性腎臓病の人の血管はただでさえ弱っているのに、新型コロナがさらに攻撃することがわかっている。

 新型コロナは肺から血管内に侵入。血管の内皮細胞の表面に吸着して血管を攻撃して血管炎を起こしたり、血栓を作ったりする。そのため、他の疾患を持つ人よりも、心筋梗塞や脳梗塞などの血管系の疾患を起こしやすくなる。

 米腎臓学会の報告によると、腎臓の疾患がなく入院せずにコロナから回復した人でも末期の腎臓病になるリスクがコロナに感染していない人の2倍だという。新型コロナによる腎臓への攻撃がいかに強いかがわかる。

 だからこそ冬に確実に訪れるといわれる第6波の前に自分自身の腎機能の状態を知っておきたい。

「腎臓の機能を調べる検査には尿検査と血液検査があります。前者は尿にタンパク質や血液がふくまれていないかを調べるのが目的です。後者は血液中の尿素窒素やクレアチニンなどを調べることで腎臓の状態を診ることになります。また、超音波や腹部CTなどで腎臓の形や大きさや画像診断したり、病状によっては腎臓の組織の一部を取って顕微鏡で調べる腎生検を行うこともあります」

 既に腎機能に異常ありと診断されている人は必要な検査を定期的に受けるべきだ。新型コロナ禍で太ったという人も、できたら検査を受けておきたい。

 とくに持病がない人はどうすればいいのか?

「血圧を夜寝る前と朝方のトイレに行く前に測って記録しておきましょう。腎機能が低下すると余分な水分と塩分が排泄されずに血液量が増えて血圧が高くなります。身内に腎臓が悪い人がいる、むくみ、ふらつき、肩こりがひどい人も血圧を測った方がいい。閉経後の女性も調べましょう」

 あなたは大丈夫?

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