コロナ禍の運動不足とストレスが女性の尿漏れリスクを高めてしまう

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 コロナ禍の運動不足が招く意外な体の不調が「尿漏れ」だ。日本泌尿器科学会専門医で、女性医療クリニックLUNA理事長の関口由紀医師に対策を聞いた。

 尿漏れには種類がいくつかあるが、女性に多いのは「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「混合性尿失禁」。

「腹圧性尿失禁は咳や大笑い、重いものを持つなどの動きで尿漏れするもの。切迫性尿失禁は尿が十分にたまっていなくても膀胱が収縮してしまうために急な尿意に襲われ、トイレに間に合わずに漏らしてしまう。混合性は、腹圧性と切迫性の尿失禁の症状が表れるものです」

 そもそも女性は尿漏れを起こしやすい。まず女性の尿道は、男性に比べて短く下向きで、腹圧に負けやすい。次に、筋肉量が少なく、子宮や膀胱、直腸を支える骨盤底筋群の筋力が低下しやすい。さらに、妊娠・出産が骨盤底に損傷を与える。

「また近年、注目を集めているのがGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)です。女性ホルモンの分泌が低下して起こる泌尿生殖器症状で、かつては老人性膣炎と呼ばれていましたが、2014年に新たな概念として提唱されました。閉経後の女性の50%に何らかの症状があるといわれています。50代になってGSMになると骨盤底の皮下組織のコラーゲン量が減少し、尿漏れや頻尿が悪化します」

 尿漏れは、女性ならだれもが起こしてもおかしくない。特に筋力や女性ホルモンの分泌が低下する更年期以降はなおさら。コロナ禍の運動不足とストレスが加わるとリスクは一層高くなる。

「尿漏れを悩んで家にこもるようになり、筋力がより低下し、尿漏れがより起こりやすくなる悪循環に陥っている方も少なくありません」

■セルフケアで対策

 関口医師が、尿漏れ改善に有効な方法として勧めるのが毎日の骨盤底筋のトレーニングだ。いくつか方法があるが、一例として、「立ったまま、おしっこやおならを我慢する要領で膣を締め、息を吐きながら骨盤底全体を持ち上げる→ゆっくり緩める」を繰り返す。「締める→緩める」の時は全身をリラックスさせて腹筋に力を入れない。医師が監修した骨盤底筋トレーニングがインターネット上で紹介されているので、それらを参考にするのもいい。

 締める感覚がわからないままに行うと効果が薄れるので、その感覚をつかむために、あおむけになり、指の第1関節までを腟に入れ、締めたり緩めたりする。腟が指に吸い付く感覚があれば正しく締められている。

「GSM対策もぜひ行ってください。デリケートゾーンが萎縮して乾燥するため、保湿剤を指につけ、第1関節から第2関節辺りまでを膣に入れて塗る。保湿剤は、肌が特に弱くなければ日々のボディーケアやフェースケアに使っているもので構いません。かゆみが出る場合はデリケートゾーン専用の保湿剤があるので、それを使ってください」

 尿漏れ対策は、セルフケアが効果を発揮する。

「3カ月間、正しい骨盤底筋トレーニングとデリケートゾーンの保湿を続ければ症状がかなり改善します。それでも80%の満足を得られなければ、女性の尿漏れを診ている医療機関を受診してください」

 健康保険適用の治療では、薬物内服治療、膀胱ボトックス注射(過活動膀胱による尿漏れに保険適用)、尿道の下面にテープを埋め込む手術があり、健康保険適用外では、服を着て椅子に座るだけで骨盤底筋を鍛えられる磁気刺激療法、膣の緩みを改善するハイフ療法、フラクショナル炭酸ガスレーザー療法などさまざまな治療法がある。

 とにかく、ひとりで悩まないことだ。

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