インドが世界に先駆けて、DNAがベースのインド製コロナワクチン「ザイコブD」に使用許可を出した。同じようなDNAワクチンは、米バイオ企業のイノビオ・ファーマシューティカルズや大阪大発バイオ企業のアンジェスも開発中だ。mRNAワクチンとは何が違うのか。
◇ ◇ ◇
【Q】DNAワクチンはどんな作り方か? 効果は?
【A】「DNAベースのワクチンは、mRNAワクチンよりも作製しやすく安定性があります。作り方としては細菌の中でSタンパク(スパイクタンパク)遺伝子を発現させるプラスミドを作ります。プラスミドとは細菌や酵母の細胞質内に存在し、核様体(DNAが織り込まれた構造物)で自律的に複製を行う物質です。私も15年ほど前にエイズワクチンとしてのDNAワクチンの開発に携わっていますが、当時からその能力は知られていました。注射針を使わずに肌に電気刺激で穴をあける高電圧注入法(エレクトロポレーション)という方法で接種すると、非常に強い免疫作用があります。ただ、インドのザイコブDは、針は使わないものの、高速噴射注射システムを使って接種する仕組みです。効果は3回接種してようやく60%ほど。DNAワクチンの欠点は高電圧注入法でないとあまり有効性が良くない点です。また、アンジェスが手掛けているワクチンも高電圧注入法とは異なるため、効果はあまり期待できません」
過去に一度、阪大の研究グループがBCGでDNAワクチンを手掛けたが、失敗に終わっている。
「ザイコブDのワクチン効果を考えると、日本政府が今後DNAワクチンに資金を投入するのはカネの無駄遣いではないかと思っています。mRNAワクチンなどよりも効果がはるかに低いからです」
【Q】来春、「KMバイオロジクス」の不活化ワクチンの承認申請が予定されている。期待度は?
【A】「私は3回目にブーストとして使用するのならば、KMバイオロジクスなどの『不活化ワクチン』でも十分効果が期待されると思っています。ただし、これから作製するなら、デルタ株を含む変異株など2種類ほどのウイルスを入れ込んだモノを作るべき。インフルエンザのワクチンがその年に流行する3~4株を予想して作るのと同じで、複数の不活化ウイルスを混合させる必要があると思います。作製は簡単で、すでに中国は約4~6カ月間で作り、外交のひとつの手段として海外に輸出しています。異なる変異株を2種以上入れた混合型の不活化ワクチンを作製すれば、現在のmRNAを3回使うよりも有益だと思います」
【Q】この不活化ワクチンはどうやって作製するのか?
【A】「アフリカミドリザル腎細胞由来細胞(vero細胞)でウイルスを培養し作製します。アフリカミドリザルの培養細胞は、非常に早く増殖するので、すぐにできる。ブースト用ワクチンとしては、最も簡単で最も早く作られるため、今のところブースト用ではベストに近いと思います」
◆10月28日に連載が単行本になりました。3回目の接種や子どもたちの接種など、まだまだ知りたい情報をQ&A形式で答えます。
「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」
(発行:日刊現代 発売:講談社)
新型コロナワクチンの疑問に答える