汗は“くさい”というイメージがありますが、本来は無臭です。汗がにおうのは体内で細菌や真菌などの雑菌が繁殖しているためです。
汗を出す汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。エクリン腺から出る汗は成分がほぼ水でできており、通常においはありません。汗や皮脂などに真菌が繁殖することが原因となります。
アポクリン腺から出る汗はタンパク質・脂質・糖質・アンモニア・鉄分などが成分で、細菌と混じることでわきがや性器(デリケートゾーン)のにおいにつながります。感染原因によってはチーズが腐ったようなにおいがすることもあります。
また、糖尿病の患者さんは甘酸っぱい汗が出るケースがあるといわれますが、これは脂肪の分解によって生成されるケトン体によるものです。
肝機能が低下している場合も汗がにおうことがあります。肝臓のオルニチン回路が機能せず、アンモニアの分解能力が低下し、アンモニア臭が漂うとされています。
胃腸の機能低下によって消化能力が落ちて汗に硫黄のようなにおいが混じるケースもあります。肉類をはじめ動物性食品の過剰摂取をしている人は気を付けましょう。
いずれも、においがした、イコール病気とは限りません。ただし、普段は気にならなかったのに汗のにおいが不快に感じるようなら、かかりつけ医に相談しましょう。
▽宇井千穂(うい・ちほ) 全日空客室乗務員を経て、皮膚科医、美容皮膚科医に転身。2009年北里大学医学部卒業。12年に公立福生病院で初期研修修了後、土佐清水病院皮膚科に勤務。現在、やさしい美容皮膚科・皮フ科秋葉原院院長。
名医が答える病気と体の悩み