海外論文に見る副反応

AZ社製ワクチンと血栓症の関連性は? 学術誌で研究報告

アストラゼネカ社製のワクチン
アストラゼネカ社製のワクチン(C)ロイター

 安全性が高いと考えられている新型コロナウイルスワクチンですが、アストラゼネカ社製のワクチンでは、「血小板減少症を伴う血栓症」との関連性が懸念されています。血栓とは血管の中にできてしまう血液の塊です。このワクチンの副反応として注目されている血栓症は、止血に重要な役割を担っている血小板の減少を伴うタイプで、まれに重篤な合併症を引き起こす可能性も報告されています。

 しかし、ワクチンとの因果関係を含め、その詳細についてはよく分かっていませんでした。そんな中、新型コロナウイルスワクチンと血栓症の関連性を検討した研究論文が、世界神経学連盟が発行している学術誌に2021年9月15日付で掲載されました。

 この研究は、新型コロナウイルスワクチンと血栓症に関する研究論文を網羅的に集め、症例の共通点や特徴、発生頻度などを検討したものです。2021年5月19日までに報告された論文を検索した結果、新型コロナウイルスワクチンと血栓症に関連した副反応については877件の論文で言及されていました。このうち、アストラゼネカ社製ワクチンとの関連性の詳細を報告していたのは12論文、36症例でした。これらの論文から、血栓に関連した副反応の報告は60歳未満の女性で多く、またワクチン接種から2週間以内に発生することが多いのも分かりました。

 この論文の著者らは、「血栓に関連した副反応の発生率は、ワクチンの接種10万回当たり1例とまれであり、ワクチン接種は依然として推奨されるべき」としながらも、「医療者は、その症状や対応について熟知している必要があり、早期の診断と治療が副反応による影響を最小限に抑えるために重要である」と結論しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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