海外論文に見る副反応

コロナワクチンで心筋炎が3.2倍増加する 世界的医学誌で報告

写真はイメージ
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 新型コロナウイルスに対するワクチンの有効性や安全性は、これまでに複数の臨床試験で検証されており、感染リスクを大きく低下させる一方で、重篤な副反応の発生頻度はまれという結果で一貫しています。むろん、ワクチンの副反応が絶対に起こらないというわけではありません。

 たとえば、新型コロナウイルスワクチンの接種後に、心筋炎(ウイルスなどが心臓の筋肉に感染することによって生じる炎症)を発症した事例が報告されており、ワクチンとの関連性が懸念されていました。

 そんな中、世界的にも有名な医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、新型コロナウイルスワクチンの副反応リスクを検討した研究論文が2021年8月25日付で掲載されました。

 この研究では、イスラエルの医療保険データベースに登録されていた173万6832人のうち、新型コロナウイルスワクチンを接種した集団88万4828人と、ワクチンを接種していない集団88万4828人が対象となっています。

 2つの集団は、年齢や性別、居住地、経済的地位などの因子が偏らないよう選び出されており、心筋炎などのワクチンによる副反応リスクが比較されました。

 解析の結果、ワクチン接種後から42日以内の心筋炎は、ワクチンを接種した集団で21件、接種していない集団で6件であり、その発症リスクはワクチンを接種していない集団と比較して、接種した集団で3.24倍、統計的にも有意に増加しました。「3.24倍の増加」というと、大きなリスクのように感じるかもしれません。ただ、この数値は「比」であることに注意が必要です。

 10万人当たりの発生件数の差は2.7人という結果であり、たとえ因果関係があるのだとしても、その頻度は極めてまれだと考えられます。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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