コロナ第6波に備える最新知識

抗体カクテル「ロナプリーブ」が新型コロナの予防薬になった根拠

基本はワクチン
基本はワクチン(C)共同通信社

 これまで新型コロナウイルス感染症の軽症~中等症向けの治療薬として用いられてきた抗体カクテル(カシリビマブ/イムデビマブ=商品名ロナプリーブ)が、新型コロナウイルス感染症の予防薬、および無症状の感染者に対する治療薬として適応拡大されることになった。

 11月4日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が承認した。

 ワクチンは、体内に侵入した新型コロナウイルスを攻撃する抗体を数週間かけてつくる。しかし、抗体カクテルは直接体内に抗体を投与するため即効性があるうえ、感染の可能性がある段階で投与すれば感染を防ぐ効果が期待できるという。

 ただし、同じウイルスの働きを抑えるモノクローナル抗体である抗体カクテル療法ソトロビマブ(商品名ゼビュディ)に予防投与の適応はない。

 カシリビマブ/イムデビマブの効能効果は「SARS-CoV-2による感染症」から、「SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制」に変更となる。ちなみにWHOは新型コロナウイルス感染症の正式名称を「COVID-19」としているが、国際ウイルス分類委員会はウイルス名を「SARS-CoV-2」としている。SARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こすウイルス(SARS-CoV)の姉妹種であるためだ。

 今回の承認の根拠となった論文のひとつは「COVID-19を予防するための2つの抗体を組み合わせた製剤 REGEN-COVの皮下注射」である。世界的にも有名な医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されている。

 研究では、患者がSARS-CoV-2感染の診断を受けてから96時間以内に組み入れた家庭内接触者(12歳以上)が対象となった。被験者は抗体カクテル群とプラセボ群にランダムに振り分け、感染予防効果を検証している。その結果、症状を伴うSARS-CoV-2感染は、抗体カクテル群753例中11例(1.5%)、プラセボ群752例中59例(7.8%)で、感染予防効果は81.4%となった。

■あくまで限定使用

 これとは別に感染が確認された無症候性患者204人をカシリビマブ/イムデビマブ1200ミリグラムを1回皮下注射した群と偽薬を投与した群を比較した研究もある。結果は新型コロナウイルス感染症に進行するリスクを31%軽減したという。

 現在使用中のワクチンの有効率はおおよそ95%。それよりは劣るものの、それなりに感染を予防できる効果が実証されていることになる。ただし、現状では以下の条件をすべて満たす患者に限定して投与することになっている。

①SARS-CoV-2による感染症患者の同居家族または共同生活者等の濃厚接触者、または無症状のSARS-CoV-2病原体保有者②原則として、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する者③SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者――。

 このため実際に使用できる人は、かなり限定されることになる。

 今回は投与方法として静脈への点滴以外に新たに皮下注射も認められた。注射は腹部か上腕、太ももの別の場所に4カ所打つ必要がある。患者の負担となるが、投与が簡単になることから往診での投与が可能になる。

 ただ、現状では同薬の副作用に関する臨床データの蓄積も十分とは言えず、ワクチンに代わる予防手段とは言えない。

 この抗体薬は米リジェネロン社およびスイスのロシュ社が開発。中外製薬が日本における開発権および今後の独占的販売権をロシュ社から取得している。米国では既に緊急使用許可を得て患者の家族ら濃厚接触者向けに投与されている。同社は海外での承認状況などをもとに判断する「特例承認」を求めていた。

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