脳出血で死なない、後遺症を残さないために知っておくべきこと

ワクチンと脳出血の因果関係は不明
ワクチンと脳出血の因果関係は不明(C)共同通信社

 新型コロナウイルスワクチンの接種後、脳出血で死亡したケースが報告されているが、因果関係は不明となっている。8月17日に脳出血を起こした形成外科医でタレントの西川史子さん(50歳)も、コロナワクチンの影響ではないかと心配する声を受け、インスタグラムで関係性を否定している。

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「私が接種したmRNAワクチンに関しては、脳出血の頻度を増加させないことが多くの研究で分かっていますので、接種された方はご安心ください」と西川さんはインスタグラムでコメント。さらに「生き方を見直すきっかけになりました」とつづっている。

 西川さんが発症した脳出血は、脳内の血管が裂けて出血する病気だ。脳の血管が詰まる脳梗塞、脳表面の膜と脳の空間の血管が裂けて出血するくも膜下出血とともに、総じて脳卒中と呼ばれる。いずれも脳血管の異常で起こる。「最大のリスク要因が高血圧。さらに糖尿病、脂質異常症、喫煙、ストレス、家族歴などさまざまなリスクファクターが加わり、発症リスクを上げる」と言うのは、川崎幸病院脳血管センター長の壷井祥史医師だ。

 西川さんの例でも分かるように、脳卒中は高齢者だけの病気ではない。治療が遅れれば命を落とす恐れがあり、助かっても後遺症が残る可能性がある。発症前と同じレベルまで回復し、現役復帰するために知っておくべきことは何か?

「第1に、どういう時、脳卒中を疑うべきか、です。『ろれつが回っていない』『手足のどちらかに力が入らない』『顔の片側がうまく動かない、力が入らない』などが見られれば、脳卒中の可能性が高い」(壷井医師=以下同)

■症状が消えても安心できない

 一方で、分かりづらい症状もある。視野が欠けている、物が二重に見える――。こういった症状は気づきにくく、疲れているからと考えがちだが、これらも脳卒中を疑うべき症状だ。

「おかしいなと思う症状が出て、しかしそれが消えてしまうケースもあります。一時的に脳の血流が悪くなり、しばらくして血栓が流れたためですが、この次に大きな脳梗塞がくることは珍しくない」

 第2に知っておくべきことは、脳卒中を疑う症状があれば、1分1秒でも早く救急車を呼ぶ。

「例えば脳梗塞の場合、発症から4時間半以内であれば可能になる『rt-PA静注療法』という治療があります。血栓を溶かす薬を静脈内投与するもので、脳の細胞が死ぬ前に血管が再開通する。結果、ほぼ後遺症なく自宅に戻れる患者がrt-PAを使わない場合と比べて明らかに増えます」

 ところがこの「4時間半」の条件をクリアするには、「様子見」をしていては難しい。救急搬送されてすぐに薬が投与できるわけではなく、rt-PA静注療法が可能かどうかを各種検査で確認しなくてはならないからだ。つまり、病院へたどり着くのが遅れれば遅れるほど治療の選択肢が減り、後遺症や命を落とすリスクが高くなる。

「rt-PA静注療法ができたとしても、発症1時間で行うか、4時間半ぎりぎりかでは成績が異なる。これにしても開始が4分遅れれば、治療成績が1%下がるといわれています。カテーテル治療では50%の患者さんが発症前と同等の生活に戻れる。しかし、4分の遅れごとに、その率が下がっていくのです」

 ここまでは脳卒中を起こした場合の話だが、当然ながら、起こさないようにすることも非常に重要。

「高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈は確実に脳卒中のリスクを上げます。健康診断でリスクファクターをチェックし、治療を受けることは必須。コロナ禍で健康診断をしばらく受けていない人もいるでしょう。以前は高血圧などがなかったとしても、コロナ禍の1年半で状況が変わっている可能性はあります」

 さらには、40代以降は一度は脳ドックの受診が望ましい。異常がなければ、2~3年ごとに脳ドックを受ける。

 まだという人は、さっそく検討してはどうか。

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