医者も知らない医学の新常識

一刻を争う脳梗塞 救急車内の治療で後遺症が24%低下

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 脳梗塞の治療は一刻を争います。2005年から血管に詰まった血の塊を溶かす、血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーター)による治療が始まったからです。この治療により血栓が溶けて血流が再開すれば、まひなどの後遺症が防げる可能性がありますが、症状が出てから4時間半以内に使用することが必要です。脳梗塞を疑うような症状があって救急車を呼んでも、病院に運ぶまでに結構時間は経過してしまいます。そして病院に着いても、今度はCTなどの検査をして、その上で薬の適応があるかどうかを判定しないといけないのです。

 そのため、多くの脳卒中の患者さんが、実際にはこの治療が適応される時期を逃してしまうのです。そこで海外では、特殊な専用の救急車にCTなどの機械を設置して、専門のスタッフが乗り込み、救急車の中で血栓溶解剤を開始する、という試みが行われています。

 今年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という一流の医学誌に掲載された論文では、アメリカにおける脳梗塞専用救急車の治療実績が報告されています。

 それによると、病院に運ぶより36分早く治療が開始され、後遺症の残る比率も24%低くなりました。これからは救急車やドクターカーが、救急治療の主体になる時代が来るかも知れません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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