進化する糖尿病治療法

数値が悪化しやすいシーズン到来…コロナ太りは年内に改善を

お肉を食べる時はたっぷりの野菜と
お肉を食べる時はたっぷりの野菜と

 今年も残すところ1カ月ちょっとになりました。昨年に続き、多くの人にとってコロナに翻弄された一年だったと思います。

 この欄にも何度も登場した「コロナ太り」という言葉。いまだ解消されていない人は、年を越す前に、少しでも元の体重に戻るよう、生活習慣を見直してほしい。数キロ痩せるだけでもいい。体重を減少方向に持っていくことが大事です。

 糖尿病をはじめとする生活習慣病は、冬に悪化します。私たちが糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)における登録病院38施設10万人強の患者データベースから血糖、血圧、脂質、体重の月別季節変動の詳細と、ガイドラインの達成率を検証し、それらに影響を及ぼす因子を固定したところ、血糖、血圧、脂質の数値は季節によって同時に変動し、12月から2月に悪化することがわかりました。

 血糖、血圧、脂質の季節変動は以前から指摘されていたのですが、数値変動を追った解析は世界初です。

 この研究はコロナ以前のデータを基にしているもの。コロナを経験した今、より深刻に捉える必要があると思います。コロナ太りで、そもそもの数値が悪くなっており、これまでは夏に多少改善されていたものの、それもないままという人が多いでしょう。その状態で冬に突入すれば、数値の一層の悪化が予想されます。

 懸念しているのは、飲み歩く機会が増えた人が多いこと。飲食店の経営者や従業員の方々のことを考えると喜ばしいことですが、コロナ太りが解消されるどころか、「もっと太った」となってもおかしくない。実際、「外食機会が増えて最近太った」という話をよく耳にします。

 さすがに大人数での忘年会や新年会をする人はいないでしょうが、年末年始はどうしてもカロリー摂取量が多く、活動量が少なくなりがち。お正月休みくらい体重のことは忘れたいと思う人は、今のうちに体重を落としておくべきです。

 冬に向けて取り入れたい「糖尿病を悪化しない生活習慣」のコツは、いずれも耳にタコができるほど聞いたことがある内容だと思います。

■プチ断食より日常食の見直しを

 1日3食、バランスの良い食事を取る、望ましくは、朝食は多め、夕食は少なめ。穀物や野菜が少なく、糖質、脂質に偏った食事を短時間で済ますと血糖値が一気に上下する血糖値スパイクが起こり、血管を傷つけ、脳梗塞、心筋梗塞のリスクを上げます。メニューのうち、炭水化物や脂分の多いものが占める割合は少なめにする。お肉を食べるときは、たっぷりの野菜と食べたり、しゃぶしゃぶや蒸し料理にして脂分を落とすのもいいでしょう。

 甘いものは脳の疲労回復、ストレス軽減になります。アルコールもリラックス効果がある。ですから適量であれば問題ありません。ただし、甘いものを食事代わりにしたり、眠れないからと寝酒をしたりするのはお勧めしません。甘いものやアルコールが好きな人は、上手にそれらと付き合っていくようにしてください。

「コロナ太り解消のためにファスティング(断食)を短期間で行おうと思うのですが、どうでしょうか?」という質問を受けることがあります。私は、ファスティングには反対の立場。いつも食べ過ぎで負荷がかかっている臓器を休ませられるので、週末のプチファスティングや1週間くらいのファスティングなら体にいいという意見もあるようですが、その後の「どか食い」を招きかねませんし、骨や臓器に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 ファスティングをするなら、日常的に取っている食事の量や、栄養バランスを見直す方がダイエットには間違いなく効果的です。どうしても胃腸を休ませたいと思うなら、早めに夕食を食べ、朝食まで何も食べない方法がいいでしょう。1週間のファスティングをする一方で、間食を頻繁に取ったり、高カロリー高塩分の食事を取ったりしているなら、そっちの方がよほど体に悪いですよ。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

関連記事