名医が答える病気と体の悩み

手汗がひどくてびっしょり…病気が隠れている可能性は?

美容皮膚科医の中村光伸氏
美容皮膚科医の中村光伸氏(提供写真)

 暑さや緊張状態になくても、手のひらがびっしょりになるくらい多量の汗をかく場合、「手掌多汗症」である可能性があります。基礎疾患や何らかの病気があって起こる「続発性多汗症」と、原因がハッキリとしない「原発性多汗症」とに分けられます。

 続発性の場合、原因になる病気がいくつか考えられます。たとえばホルモンが過剰になったり、不足することによる「内分泌疾患」や交感神経が活発化する「神経疾患」です。前者は甲状腺機能亢進症や橋本病といった疾患で、後者は多発性硬化症やパーキンソン病といった疾患が当てはまります。

「がん」や「ケガ」によって腫瘍などが神経系を刺激し、汗のコントロールができなくなるケースも考えられます。発汗は体温調節の重要な機能で、この発汗をコントロールしているのが自律神経系の交感神経です。疾患によって神経経路にダメージが加わることで、交感神経が興奮状態になり、暴走してしまうのです。ただし、いずれの疾患の場合も手汗以外に体の痛みといった別の症状が出ます。

 一方、両手だけに汗が出て体調に異変を感じないなら、原発性多汗症の可能性があります。遺伝疾患の素因はあるものの、原因は分かっていません。皮膚科で問診と汗の量を計測し、原発性多汗症と診断されたら、塗り薬「塩化アルミニウム液」を処方されます。手のひらに直接塗り込んで、汗腺を封じて汗が出てこないようにします。

 それでも効果が見られない場合、保険適用外になりますが、ボツリヌス療法を選ぶ方が増えています。ボツリヌス菌を注射することで、ボツリヌス菌の神経毒素によって筋肉の収縮を抑制し、交感神経から伝達される汗を出す信号をブロックする治療法です。年2~3回の注射で症状は軽減します。相場は1回5万円程度です。

 また、ETS(胸腔鏡下胸部交感神経遮断術)の手術も可能です。こちらは保険適用で、脇の下や腕に穴をあけて、内視鏡から交感神経の束を見つけて切断します。

▽中村光伸(なかむら・こうしん)北里大学医学部卒。医学博士。北里大学整形外科入局後、ドイツ・フンボルト大学外傷外科留学、台湾・チャンガン大学へマイクロサージャリー美容外科留学。帰国後、北里大学救命救急センター整形外科長などを経て、2011年12月から東京・北新宿に「光伸メディカルクリニック・AIONメディカルスタジオ」を開院。

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