HPVワクチン接種+検診で子宮頸がんをほぼなくせることが世界中で証明

接種機会を逃した年代でも定期接種の扱いに(写真はイメージ)
接種機会を逃した年代でも定期接種の扱いに(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 1月26日付の本欄で、子宮頚がんを予防するHPVワクチンの積極的勧奨が8年ぶりに再開されるようになったことを紹介した。このワクチン、公費負担で接種費が無料になる定期接種の対象は小6から高1の女性だが、この8年間に接種機会を逸したそれ以外の年代でも定期接種と同様の扱いとなった。また、HPVワクチンは、男性(男子を含む)も接種を検討すべき価値がある。前回に続き、自治医大付属さいたま医療センター産婦人科の今野良教授に聞いた。

■来年度25歳から17歳女性も対象

 HPVワクチンが、日本で子宮頚がん予防の定期接種となったのは2013年4月。しかしその2カ月後、「積極的勧奨差し控え」の通知が厚労省から出されたのは、前回触れた通りだ。HPVワクチンの安全性は膨大なエビデンスで証明されているにもかかわらず、積極的勧奨まで8年以上もかかってしまった。

「つまりこの間、定期接種の機会を逃した女性たち(少なくとも300万人以上と推定)がいるのです。そこで、1997年度生まれ(来年度25歳)から2005年度生まれの女性たちも、キャッチアップ接種(定期接種と同様に無料)の対象となりました」

 キャッチアップ接種のスタートは、従来の定期接種と同様に今年4月(市町村によっては前倒しのところもある)。期間は3年間だ。

「標準的に接種は6カ月間に3回です。8年前に接種を1回、または2回しており、そのまま中断していた方も、3回目まで接種を続けてください。接種間隔が延びても有効性は落ちませんので安心してください。ここがコロナウイルス(HPVは変異しない)、コロナワクチン(作製法が異なる)とは違う点です」

 HPVワクチンは、ターゲットとするHPVの型をいくつ含んでいるかによって、「2価」「4価」「9価」の3種類に分類されるが、定期接種とキャッチアップ接種に使用されるのは「2価」と「4価」。「2価」「9価」は子宮頚がんの予防効果が高く、「4価」および「9価」は、性器にできるコンジローマの予防も可能。コンジローマは良性のHPV感染症で、性行為の相手にうつす可能性があり、再発する厄介な病気だ。

 よくあるのが、「HPVワクチンを打たなくても、検診で早期発見できればいいのでは?」という声だ。HPVワクチンは子宮頚がんの発生自体を抑える「1次予防」で、検診は、がんを早く見つける「2次予防」。そもそも目的が違う。しかも、子宮頚がんはたとえ早期発見できても術後、不正出血や妊娠時の流産、早産のリスクを高める。進行がんでは予後は悪く、治療の後遺症もある。HPVワクチンで子宮頚がんを8~9割減少させられ、検診も加えればほぼ予防できることが世界中で実証されており、その恩恵を受けない手はない。 

■男性にもがん予防効果

 冒頭で、「HPVワクチンは男性(男子)も接種を検討すべき価値がある」と述べた。現在、日本で男性への接種が薬事承認されているのは、肛門がんとコンジローマの予防のための「4価」だけで、定期接種ではなく、任意接種(自己負担)となる。

「HPVワクチンを男性も検討すべき理由として重要なのが、HPV感染が肛門がんや、中咽頭がんなどの原因にもなること。そのため、男女ともにHPVワクチン接種を勧めている国が増えています。男女に接種すると集団免疫効果が早く表れます」

 先に挙げた「9価」ワクチンは、海外では子宮頚がん、肛門がん、中咽頭がんおよび頭頚部がんなどの予防に薬事承認され、定期接種にもなっている。米国ではこの「9価」の接種が、9歳から45歳までの男女に勧められている。日本では薬事承認がまだで、女性のみ自己負担で10万円ほどかかる。

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