科学が証明!ストレス解消法

運動習慣のない人が運動前にストレッチを入念にするのはNG

写真はイメージ
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 当連載でも触れたように、座りっぱなしといった体を動かさない状態はさまざまな病気の罹患(りかん)リスクを高めます。アメリカでは、「Sitting Kills You」と報道されるほどですから、適度に体を動かすことはとても大事です。

 スポーツはもちろん、散歩やジョギングなども気分のリフレッシュにつながりますから、生活の中に運動を取り入れることは有効的。しかし、自分のキャパシティーを越えるような運動や、久しぶりに体を動かすといった状況においては、無理は禁物です。

 中には、入念にアキレス腱を伸ばすなどすれば問題ないと考える方もいるかもしれません。

 しかし、2006年、欧州スポーツ医学会は、「運動前のストレッチングは、筋力やジャンプなどのパフォーマンスを改善するエビデンスに乏しい」と発表しています。彼らは、それ以前に研究されていた「ストレッチングとパフォーマンスに関するデータ」、実に20を超える論文をもとに分析した結果だと言い、さらには「パフォーマンスを低下させる可能性がある」とも付言しているほどです。

 習慣的なストレッチングであれば、パフォーマンスを改善させる可能性はあるが、付け焼き刃のストレッチングには効果はない--。久しぶりに体を動かすからこそ「ストレッチは丁寧に」と思い、ほぐす方が多いでしょうが、実は効果がないどころか、パフォーマンスを下げる可能性すらあるとは驚きです。

 ストレッチのやり過ぎは、普段運動をしていない人にとっては、逆に筋力を低下させてしまうそうで、ブラジルのエスタシオ大学・ルビニらの研究でも、運動前のストレッチングは「筋力を低下させる」と明らかにしています。ただし、同大学の研究は興味深い点を指摘しています。それはストレッチングの長さについてです。

 実は、研究の多くが、長い時間をかけたストレッチがパフォーマンスを低下させる理由につながっているのではないかと指摘しています。

 そこで、カナダのニューファンドランドメモリアル大学・ベム博士が、パフォーマンス、筋収縮のタイプ、ストレッチングの方法(時間や強度)、対象者の特性(トレーニング歴)など詳細に調査をしたところ、次のようなことがわかりました。

「90秒を超えるとパフォーマンスを低下させ、30秒以内であればパフォーマンスを維持できる」「トレーニング歴の長い人は影響が少なく、トレーニング初心者にこそ影響しやすい」などなど。つまり、初心者は30秒以下の適度なストレッチで十分……。

 ストレッチも、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」なのです。

 また、体を動かす際は、セルフコントロールを向上させる意味で、自分に言い聞かせるように独り言をつぶやくことが効果的です。自分に対してより認識させるためには、自分の行動を言語化すると◎。

 久々にスポーツをする際は、30秒ほどのストレッチと、何のために運動をするのか“目標を自分に言い聞かせる”。これがポイントですよ。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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