日本でオミクロン株の感染が続いているのは、ワクチンの3回目接種が遅れたからだと言われている。しかし、本当だろうか。
WHO(世界保健機関)が、ホームページ(WHO Coronavirus《COVID-19》 Dashboard)で公開しているオープンデータを使って検証してみよう。
まず各国のワクチン接種回数である。世界228カ国・地域の人口100人当たりのワクチン接種回数が載っている。トップはイギリス領ジブラルタルで334回である。主要国のトップ(全体の5位)は韓国だ。約250回に達している。1回目、2回目の接種率を85%とすると、3回目の接種率は70%近くに達していることになる。
日本は65位で、主要国の中では下位グループに属している。たしかに日本の3回目接種は遅れていると言える。しかし、今年に入ってからの新規陽性者数と死亡数を比べてみると、日本は飛び抜けて優秀な成績を収めていることが分かる。
実際、韓国と比べても、陽性者数、死亡数ともに下回っている。
しかもその韓国は、直近1週間で、連日十数万人もの陽性者を出している。日本の人口に直せば、毎日30万~40万人も発生していることになる。
ちなみに韓国で使われているワクチンは、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカである。
日本は3回目が遅れているが…コロナワクチン接種率は世界で何番目?
イスラエルは、多くのマスコミからワクチン優等生として称賛されている。しかし、接種回数の順位は日本よりも低い。WHOの数字は2月13日時点なので、イスラエル政府の公式ホームページで最新の数字を確認したところ、2月28日までに100人当たり195回に増えていた。この2週間でかなり頑張ったようだ。
フランス、イギリス、ドイツは昨年9月から、最初は医療従事者やハイリスク者を中心に、次第に全国民を対象に3回目接種を進めてきた。
ところが、いずれも昨年12月下旬から1月にかけて(3回目の効果が出始めているはずなのに)陽性者が爆発的に増え、2月に入ってようやく減少に転じてきた。
感染制御の目的は、新規陽性者や死者を減らすことであり、ワクチンはそのための手段のひとつに過ぎない。目的と手段をすり替えるような報道はいただけない。しかも日本は陽性者も死者も少なく、世界中で最も感染制御に成功している国と言っていい。
また各国の状況を見る限り、3回目接種をしたからといって、必ずしも感染拡大を抑えるのに成功しているわけではない。
結局、ワクチンに多くを期待しすぎず、重症化リスクを下げてくれる程度に思っておいたほうがよさそうである。
(長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授・永田宏)