コロナ禍で増加 「帯状疱疹」を重症化させない2つのポイント

重要なのは早期発見、早期治療
重要なのは早期発見、早期治療(C)PIXTA

 帯状疱疹は、水ぼうそうと同じ水痘・帯状疱疹ウイルスで起こる病気で、発疹が体の左右どちらかに現れる。コロナ禍で帯状疱疹が増えているという声も聞く。知っておくべきことを、いしいクリニック築地(東京・中央区)の石井康多院長に話を聞いた。

 水ぼうそうは一般的に子どもの頃に発症する。しかし、水ぼうそうが治った後も、そのウイルスは背骨の近くにある神経のかたまり(神経節)に潜伏。加齢、ストレス、過労、体調不良などで免疫力が低下すると再活性化し、神経にダメージを与えながら皮膚に進み、帯状疱疹として発症する。

「ストレスや体調不良が要因となるので、コロナで心身のダメージを受けて発症しやすくなるというのはあるでしょう。当院はもともと帯状疱疹の患者さんが多いのですが、近年感じているのは発症年齢の若年化です。かつては50代以上で発症しやすくなるといわれていました。しかし、今は30~40代で発症する患者さんも珍しくありません。社会が複雑化し、ストレスや疲労感を抱えている人が増えたからだと考えています」

■体の片側が「チクチク」「ピリピリ」痛む

 帯状疱疹で重要なのは早期治療。帯状疱疹の70%は1カ月以内に症状が治まるが、言い換えれば30%は1カ月を過ぎても治らない。また、10%は後遺症である帯状疱疹後神経痛を発症する。早期治療は、それらのリスクを下げるのだ。症状はまず、チクチク、ピリピリといった皮膚の痛みから始まる。体の左右片側に起こる。

「帯状疱疹は顔に出ることも多く、目の周りがピリピリする、頭痛がある、と訴える患者さんもいます。何かが触れなくても、皮膚の違和感がある。ジンジン、ズキズキと感じる人もいますし、痛みの範囲は狭い場合もあります」

 痛みは数日から1週間ほどで水膨れを伴う赤い発疹になる。最初は皮膚が赤くなる程度の人もいる。

「できれば体の片側の皮膚の違和感の段階で、皮膚科を受診してほしい。問診と視診から帯状疱疹と判断できれば検査なしにすぐに抗ウイルス剤を投与します。早ければ早いほどいい」

■後遺症のリスクも下げる

 帯状疱疹の早期治療が重要なのは、すでに触れたように、後遺症である帯状疱疹後神経痛のリスクを下げるためだ。

 治療が遅れると神経が損傷され、後遺症が残るリスクが上がる。帯状疱疹そのものは治っているのに神経の痛み(帯状疱疹後神経痛)が続くのだ。衣類が触れただけでも強い痛みを感じるケースもあり、痛みの期間は比較的、長きにわたる。

「帯状疱疹の痛みは皮膚や神経の炎症に伴うもので、完治が治療目的。しかし帯状疱疹後神経痛になると、痛みを完全に取り除くよりは痛みをコントロールするのが目標となります。使う薬も異なります。帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛への移行は教科書では1~2カ月となっているものの、明確な区切りがないので、患者さんの痛みの訴えから医師が判断し、治療を切り替えていきます」

 帯状疱疹後神経痛の治療では、抗てんかん薬、抗うつ薬、オピオイド(医療用麻薬の一種)、神経ブロック、漢方薬などを使い分ける。ペインクリニック(痛みの治療)に精通した医師の治療が望ましい。

 帯状疱疹で重要なのは早期発見、早期治療と述べた。

 もうひとつ非常に重要なのが、50歳以上が対象の帯状疱疹ワクチン接種。コロナワクチンとは2週間空ければOKだ。

「帯状疱疹、ひいては帯状疱疹後神経痛の予防になります。また、帯状疱疹には角膜炎、結膜炎、髄膜炎、顔面神経麻痺や味覚障害・内耳障害を伴うラムゼイ・ハント症候群といった合併症もあるのですが、それらの予防にもなります」

 合併症は早期治療でも起こる可能性がある。抗ウイルス剤の治療中に何らかの異変が生じたら、すぐに医師へ相談を。

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