病気を近づけない体のメンテナンス

自律神経(上)原因不明の不調 交感・副交感の“不和”を食事で解消する

糖質の取り方には注意が必要(写真はイメージ)
糖質の取り方には注意が必要(写真はイメージ)

 眠れない、イライラする、気分が落ち込む、頭痛、めまい、動悸、便秘……。こうした不調に悩まされているのに、医師には「原因不明」と言われた場合、自律神経の乱れからきている可能性が高い。いわゆる「自律神経失調症」だ。

 自律神経は自分の意思とは無関係に、心臓や呼吸器、消化器などを働かせ、状況に応じて働き方を調節している神経。

 心身を活動的にさせる戦闘モードの「交感神経」と、心身を休ませるリラックスモードの「副交感神経」の2種類がある。

 そのため、交感神経の働きが高い状態が続くと、心身が張りつめた状態になる。すると「イライラ」「不眠」「動悸」「頭痛」「肩こり」「冷え」「筋肉痛」「高血圧」などが起こりやすくなる。一方、副交感神経の働きが高い状態が続くと、「だるい」「眠い」「やる気が出ない」「頭がボーッとする」「低血圧」などの症状が出てくるのだ。

名医が教える!健康寿命を延ばして元気になる知恵 自律神経」(朝日新聞出版)の著者で、「工藤内科」(福岡県みやま市)の工藤孝文院長が言う。

「交感神経と副交感神経に関しては、『一方の働きが高まると、もう一方の働きが弱まる』と思われがちですが、それは誤解です。交感神経の過度の緊張はよくないので、それを抑えることは大事ですが、交感神経の働きを抑えれば自然と副交感神経の働きが高まるわけではありません。同時に副交感神経の働きを高めていくことが大切です。両者の働きをほどよく高めることで自律神経のバランスが取れるのです」

 自律神経のバランスが崩れる原因はいくつもあるが、特に現代人に大きく影響しているのは精神的や身体的、環境的などの「ストレス」。これによって交感神経の働きが過剰になっている人が多くみられるのだ。

レモンに含まれるクエン酸は血糖値の上昇を防ぐ働きがある
レモンに含まれるクエン酸は血糖値の上昇を防ぐ働きがある
糖質の取り方に要注意

■血糖値の乱高下を防ぐ

 では、身近な対策として、自律神経を安定させる食生活とは、どんなことがポイントになるのか。特に「糖質の取り方」には要注意という。空腹時に砂糖など糖質の多い飲食物を取ると、急激に血糖値が上昇する。すると多量のインスリンが出て、3~4時間後には血糖値が急降下する。

「そうなると今度は、血糖が下がり過ぎないようにするため、アドレナリンやコルチゾールなどのホルモンが出ます。これらは交感神経を刺激して、頭痛、動悸、イライラ、不安などを起こします。自律神経を安定させるには、血糖値の乱高下を防ぐことが大切です」

 空腹時の高糖質食を避けるほかにも、注意点がいくつかある。野菜やタンパク質が不足した食事には要注意。野菜やタンパク質を食べてから炭水化物(ご飯)を少量取ることで、血糖値の急上昇が防げるからだ。

 トランス脂肪酸の多い食品の取り過ぎにも気をつけたい。大量の砂糖が含まれている清涼飲料水やエナジードリンクなどは極力控えるようにしよう。

■レモン・梅干しの酸味が効く

「酸味」も血糖値を安定させるポイントになる。レモンや梅干しの酸味は「クエン酸」という成分によるもので、血糖値の上昇を防ぐ働きがある。また、疲労回復作用にも優れている。

《レモン水の作り方》

 水500㏄に、レモン汁大さじ1を混ぜて飲む。

《梅醤番茶の作り方》

 湯のみ1杯の番茶かほうじ茶に、種を取った梅干しを1個入れる。それに、しょうゆ小さじ1、ショウガ汁少々を加える。

■自律神経を安定させるベスト3食材

 普段からコンスタントに食生活に取り入れることができ、自律神経の安定に効果的なベスト3の食材を挙げるなら、「鶏胸肉」「ショウガ」「トマト」になるという。

「鶏胸肉には疲労回復に役立つ『イミダペプチド』という成分が、ショウガには体を温める『ショウガオール』や『ジンゲロール』などの成分が、トマトにはリラックスを促す『GABA(ギャバ)』や抗酸化作用のある『リコペン』が豊富で、それぞれ自律神経の安定に役立ちます」

■デザートはおからヨーグルト

 自律神経の安定には、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えることが重要になる。自律神経によいデザートの代表格は「おからヨーグルト」だ。作り方は簡単。おからパウダー「1」に対して、プレーンヨーグルト「4」を混ぜるだけだ。

 次回は、自律神経を安定させる生活習慣を紹介してもらう。

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