うがい30秒でコロナの力価がほぼゼロに 注目の「MA-T」とは?

うがい30秒で感染力がほぼゼロに
うがい30秒で感染力がほぼゼロに(C)PIXTA

 新型コロナウイルスは、感染力がより強いオミクロン株の別系統「BA.2」への置き換わりが指摘されており、国立感染症研究所の試算では、4月上旬には感染の70%を占めるとされる。置き換わりが進めば、感染者数が増加に転じ、入院患者も増える可能性がある。そんな中、コロナ対策の有効な手段として注目を集めているのが「MA-T」だ。本紙では、2020年8月にMA-Tを取り上げた。大阪大学歯学部付属病院顎口腔機能治療部の阪井丘芳教授に、改めて話を聞いた。

 MA-Tは、「Matching Transformation System」の略で、日本語では「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液」。東京のベンチャー企業のエースネットが、2009年に完成させた。

「まだ数は少ないのですが、コロナ患者4人に、MA-Tを口に含んで30秒ほどうがいをしてもらうと、その直後にはコロナウイルスの力価(感染力)がほぼゼロになりました。その効果がどれくらい持続するかは今後の結果を待たねばなりませんが、30分から1時間は持続するのではないかと期待しながら研究を進めています」(阪井教授=以下同)

 MA-Tの主成分は亜塩素酸イオン水溶液で、そのままでは水と変わらない。しかし細菌やウイルスがいると、細菌やウイルスを攻撃する水性ラジカルが必要量だけ生成される。細菌やウイルスがなければ、水性ラジカルは生成されない。

「そのため性質が非常に安定しており、10年以上長期保存しても性質が変化しません。従来の消毒剤であるアルコール、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウムでは、そうはいきません。アルコールは揮発性で、ほかの2つは数週間から数カ月で効果がなくなります」

■大阪大が効果を証明

 阪井教授がMA-Tを知ったのは2019年12月。要介護者の口腔ケアを安全に行える除菌成分を探していたときだった。大阪大学薬学部が5年ほど前からエースネットとMA-Tの共同研究を行っており、口腔ケアに使えるのではないかとの相談があったのだ。

「MA-Tを使って口腔ケアを行うと、除去に30分以上かかる場合もある口腔内の乾燥痰や剥離上皮がコロッと取れた。そこで20年1月から口腔ケア商品の共同開発を始めたのです」

 しばらくして日本でもコロナが感染拡大。商品開発を行う一方で、阪井教授は大阪大学微生物病研究所の松浦善治教授との共同研究で、50ppmのMA-Tは、コロナウイルスを1分間で99.98%不活性化することを突き止めた。

 さらにコロナの受容体であるACE2は唾液腺にもかなり存在することを20年8月に英文誌で発表。この内容は世界中に配信され、21年3月には米国立衛生研究所の研究で、コロナ感染者の死亡者の多くは唾液腺感染と唾液腺細胞内でコロナウイルスの増幅があることが明らかになった。

「コロナは口から感染する。コロナに限らず感染症対策では口腔ケアが非常に重要だと、はっきり示されたのです」

 MA-Tと、ほかの消毒剤(アルコール、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム)を比較した研究では、MA-Tだけが、除菌・抗菌効果に優れ、人体に対して安全で、皮膚刺激、可燃性、腐食性がなく、無味無臭で長期保存が利く--のすべてに該当した。これらの特長から、ほぼすべての国内線航空機とホテルなどで利用され、プロ野球、Jリーグ、演劇をはじめとするスポーツ、エンターテインメント関連でも普及が進んでいる。

 今年に入り、口腔ケア用のジェルが医療従事者向けに発売。一般の人向けの口腔ケア商品としてはマウスウオッシュが複数社から出ている。注目度の高さからまがい品も登場しており、商品を選ぶときは、MA-Tの品質保持などを目的に設立された「日本MA-T工業会」の認証マークが入ったものを選ぶ。マークは、同会のホームページでチェックできる。

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