科学が証明!ストレス解消法

人間の記憶は外部からの情報や圧力で容易に歪んでしまう

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人間のウソ──というのは、バレるものなのか? 本日は、その点について考えてみたいと思います。

 米国シアトルにある脳指紋法ラボラトリーズ社のファーウェル博士は、「見たものを見ていないと言い張っても見破ることができる」と公言しています。ウソは、ある程度見破ることができるというのです。

 人間には、「P300」と呼ばれる脳波の波形があります。既知のものを認識したとき、およそ300ミリ秒から500ミリ秒後にその脳波が表れ、測定した際にP300の波形が表れれば、ウソをついている可能性は高くなる……。ウソ発見器などと呼ばれるものは、こういった脳波の波形を参考にしているんですね。

 余談ですが、ここ日本では自己負罪拒否特権といって、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」とする原則が存在します。自白することは、自分の権利。すなわち、強制的に吐かせたり、他者が明らかにすることは禁じられています。自白剤を使った捜査が認められていないのも同様の理由からです。

 話を戻しましょう。ファーウェル博士は、「P300でわかるのは容疑者が何かを知っているということだけ」と話しています。例えば、窃盗犯が洋服に興味がなければ、被害者がどんな服装をしていたかは知覚にとどまっていない可能性がある。結果、P300を使っても判断が難しくなってしまう、と。また、研究者の中にはP300の効果に懐疑的な人もいます。やはりこの世にウソを見抜く完全な装置など存在しないと言えそうなのです。また、「この人はウソをついているに違いない」といった“前提”ありきで話を進めることは、とても危険な考え方です。

 ワシントン大学のロフタスとパーマーの研究(1974年)に、「人間の記憶は、外部からの情報や圧力で容易に歪んでしまう」というものがあります。ロフタスは、被験者に自動車事故の映像を見せ、その後、事故についてAグループには「車が激突したとき、どのくらいのスピードでしたか」と聞き、Bグループには「車がぶつかったとき、どのくらいのスピードでしたか」と聞きました。すると、「激突」という言葉を使用したグループの方が、「よりスピードが出ていた」と答えたのです。

 さらに、その1週間後に再び同じ被験者を集め、今度は映像を見せずに事故について質問しました。「ガラスが割れるのを見たか」という質問をしたところ、「激突した」と質問した人は、「ぶつかった」と質問した人の倍以上、「割れていた」と回答したそうです。実際には、ガラスは1枚も割れていなかったにもかかわらずです。

「激突」という前提があるから、記憶や証言が歪んでしまう。「ヒトの記憶は、自由と同じで、もろくはかないものだ」とはロフタスの言葉です。ウソと決めつけたり、こういう人物だからと決めつけたりすると、泥沼にハマってしまう可能性がある。ウソを見破ることは難しい。だからこそ、先入観や前提にとらわれないように気を付けなければいけません。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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