アメリカは夏に向けた旅行シーズンを迎え、空の旅の旅客数も新型コロナのパンデミック前の水準に戻りました。一方で1日の感染者は10万人で高止まりしていますが、マスク義務付けなどの規制はなく、ワクチンと早期治療で対応しています。そんな中、関係者が頭を痛めているのは、新型コロナウイルスの変異株が次々と置き換わるスピードに、ワクチンが追いつかないことです。
現在アメリカの感染の6割を占めるのはオミクロン株亜系統BA2.12.1で、その前のオミクロンBA2 株にわずか1週間あまりで取って変わるという凄まじい感染力を見せています。実際、私の周りの感染者のほとんどは3回目までワクチンを打っている、つまりブレイクスルー感染で、無症状の人もいましたが、数日間高熱が出た人もいました。
この亜系統は、最初のオミクロン株の感染で得た抗体は効かず、ワクチンに対してもブレイクスルーしやすいとされています。特にワクチンを打って半年近く経つと抗体が減るので感染しやすくなりますが、それでも重症化を防ぐ効果は高いという臨床データが出ています。
それ以上に気になるのは、次にアメリカでの流行が予測されるオミクロンBA4とBA5です。南アフリカでは、人口の98%がワクチン接種または感染による抗体を持っているにも関わらず、この2つが大流行している、つまりほぼすべてがブレイクスルー感染ということになります。
こうなると問題は、いかにして最新の変異種に合わせたワクチンを作って打つのかということになってきます。製薬会社は変異に合わせて迅速に中身を変えられるとしてはいますが、それでも臨床実験や製造工程に時間がかかります。それが変異のスピードに追いつかないことが懸念されているのです。
それでも朗報なのは、初期に大流行したオリジナル株対応のワクチンよりは、オミクロンに合わせて作ったワクチンのほうがずっと効果があることです。つまりできる限りアップデートされたワクチンを打ち続けるしか今のところ対策はありません。
変異とワクチンのスピード競争がいつまで続くかもわからない中、人々は今日も満席の飛行機で旅行に出かけています。