名医が答える病気と体の悩み

よく顎が外れる…どんな治療法があるのか 手術はすべき?

形成外科の簑原沙和氏
形成外科の簑原沙和氏(提供写真)

 顎関節脱臼は、神経筋の異常による咀嚼筋の協調不全によって起こります。いわゆる“顎が外れた”と呼ばれる状態です。通常、大口を開けると顎の関節は外れますが、閉口すると元の位置に戻ります。

 しかし、関節を支える筋肉がつったり、靱帯が緩んだりして元に戻らなくなるのが、顎が外れた状態です。

 過度の開口や打撲、顎骨骨折といった外的要因によって引き起こされるケースもあります。

 口腔外科でレントゲン、CT検査を経て、口が開いたまま閉じない、うまく話せない、唾がのみ込めない、食事が困難などが認められると、顎関節脱臼と診断されます。

 手術の前に「徒手的整復法」による治療が一般的です。口が少しでも開くなら「ヒポクラテス法」があります。患者さんの頭が動かないように固定し、医師は両方の親指にガーゼを巻いて下顎の奥歯の表面に指を置き、親指以外の4指で下顎の縁を支えます。

 その後、親指で下顎を下方に押して、下顎を後ろに押し込みます。

 次に「顎関節脱臼防止帽 AGOキャップ」の装着です。専門の器具を使って下顎から頭部を固定する方法です。

 また「自己血注入療法」は、患者さん自身の血液を顎の関節に注入し、関節内を硬くする治療法です。関節の可動域を制限し、外れないようにします。患者さん本人の血液を使用するので、感染症のリスクも低く、関節に局所麻酔しますので、痛みもありません。ただし、成功率は安定していないのが現状です。

 これらの治療法を試しても、口が開かない状態が慢性化したり、顎の痛みや咀嚼などが改善されない場合、手術を検討します。

 特に基礎疾患がある方や高齢者は、咀嚼に障害が起こると誤嚥性肺炎のリスクが高まりますから、手術を選ぶケースが多くみられます。

 顎関節脱臼を治療する手術にはいくつかありますが、たとえば「関節結節切除術」が有効です。顎関節の前方部分にある関節結節を除去する手術で、全身麻酔の手術となります。

▽簑原沙和(みのはら・さわ) 2015年3月神戸大学医学部医学科卒業後、国家公務員共済組合連合会浜の町病院臨床研修、17年から昭和会今給黎総合病院形成外科、18年昭和大学病院形成外科などを経て、現在は東京臨海病院勤務。

関連記事