「梅毒」が急増中! 実際の感染者数は報告を大きく上回る可能性

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 近年、報告数が増えているのが性感染症の梅毒。1948年以降、減少傾向だったが、2010年を境に増加に転じ、19、20年は減少したものの、21年の報告数は再び増加した。国立感染症研究所によると、21年に全国の医療機関で梅毒と診断された届け出数は7875件。近年の最多数である18年の7007人を大きく更新し、過去最多だった。

 男性は20代前半、女性は20代が多く、報告数は東京都で急増。しかし、東京以外の広い地域でも感染者の増加は報告されており、さらには感染者の捕捉率は12~25%との研究もあり、実際の感染者数は、報告されている数を大きく上回る可能性が指摘されている。

「それこそ、一日に何人もの梅毒患者さんが来る日もあります」

 こう話すのは、東京都の梅毒患者数の10分の1が来院する「プライベートケアクリニック東京」東京院の小堀善友院長。

 なぜ増えているのか?

「かつてはインバウンドの影響ともいわれました。しかしそれはコロナ禍でも梅毒患者数が増えていることを見ると、違うことがはっきりとわかる。梅毒の患者を調べると、男性の大半は性風俗利用歴があり、女性の大半は性風俗の従事歴があった。『若者の草食化』が2000年代後半ごろから指摘され始めましたが、確かに性に消極的な若者が増えてはいるものの、一部は活発に性活動を行っており、治ってはまた感染を繰り返していることが考えられます」

 この梅毒、早期発見・早期治療が肝要なのは他の性感染症と同様に、感染を知らずに性行為をすると、そのパートナーに感染させてしまい、感染拡大につながる可能性があること。また、妊娠中のパートナーが、梅毒に感染した男性からうつされると、母子感染のリスクもある。

「そのため妊婦健診で妊娠初期に梅毒の検査が実施されます。しかしそれ以降に感染すると、診断の機会がなくなります。妊娠時の梅毒感染は、流産・死産、低出生体重や骨軟骨病変などの先天梅毒のリスクを上昇させます。国立感染症研究所の報告では、年間200例を超える妊娠症例が予測されています」

 梅毒の感染ルートは性行為だが、これには口腔性交、肛門性交も含む。

 コンドームを着けていても、粘膜同士の接触で感染するので、100%安全とは言えない。

「梅毒の症状としては、感染後、1~3カ月ほどで性器などの感染部位にしこりやイボのようなものができます。ただ痛みなどはなく、そのうち消えてしまう。しばらくして手のひら、足の裏、体に発疹が出てきます。大抵の人はこの段階で泌尿器科や皮膚科などを受診します」

■経験を積んだ医師の診察を

 1カ月以上前に性風俗を利用したなど感染の機会に思い当たる人は梅毒の可能性も考えるべき。その際、性感染症を多く診ている医師への受診がお勧めだ。

 梅毒はさまざまな症状が出るため他の病気と間違われることがしばしばある。梅毒を疑って診断しないと診察はかなり難しい。

「さらに、梅毒には採血でできる2つの抗体検査があるのですが、過去に梅毒にかかったことがあれば、現在梅毒でなくても陽性と出ますし、梅毒のごく初期では2つの抗体検査ともに陰性となる。抗体がすべて陰性にもかかわらず明らかに梅毒の患者を、私は何人も見たことがあります」

 梅毒かどうかを診断するには、抗体検査の結果だけに頼らず、患者自身の背景(性風俗の利用歴や従事歴など)と現在の症状を重要視する。これは、経験を積んだ医師でないとできない。

 梅毒に感染しないよう、不特定多数の人との性行為を避ける。性感染症リスクの低い性行為に努める。そして、疑わしき症状があれば、速やかに調べる。

 なお、梅毒の検査は多くの自治体の保健所などでも、HIV(エイズウイルス)の無料匿名検査と同時に受けられる。

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