60歳からの健康術

性感染症編(3)感染リスクの男女差に意外な理由 性活動だけではない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男女平等、男女同権が当たり前の世の中になってきたが、体のつくりが異なる以上、病気については当然男女差がある。性感染症も例外ではない。

性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長に聞いた。

 厚生労働省が公表している性感染症報告者数によると、淋病感染者数は令和2(2020)年の55歳から59歳までの男性感染者数が160人に対して女性感染者数は17人。その年の50歳から54歳までの女性の淋菌感染者数は37人、同じく45歳から49歳は55人だった。

 クラミジアはどうか。同年の55歳から59歳の男性のクラミジア感染者数304人に対して女性は43人と圧倒的に少ない。しかも50歳から54歳までの女性のクラミジア感染者数は135人、同じく45歳から49歳は295人だから50歳から55歳くらいを境に大きく減少していることがわかる。

 なぜ50歳から55歳を境に女性の感染者数は激減しているのか?

「性感染症は性交回数に比例して感染者数は増えていく。それだけこの年代の男性は女性に比べて性活動が盛んだといえますが、女性の淋菌やクラミジアの感染者数が50歳から55歳以降、急激に減少する背景には、女性は閉経により円柱上皮細胞が消失することも関係すると考えられています」

 円柱上皮細胞とは、若い女性の子宮腟部や子宮頚管部の粘膜などに存在する細胞のこと。淋菌やクラミジアはこの細胞を好んですみつくといわれている。

「しかし、日本の女性の多くが50歳から55歳ごろまでには閉経期を迎えます。それを過ぎると、円柱上皮細胞は子宮腟部や子宮頚管部から後退して消失するので、閉経後の女性は淋菌感染症やクラミジア感染症にはなりにくいといわれています」

 とはいえ、当然のことながらこれらはそうした傾向にあるということに過ぎない。実際、2020年のデータでも60歳以上でも淋菌感染症になる人は17人、クラミジア感染症になる人は26人いた。

 閉経後の女性は淋菌感染症やクラミジア感染症になりにくいとはいえ、決してならないということではない。そのことは覚えておいた方がいい。

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