新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、式典や祭りなどの中止や規模の縮小といった対策がなされてきました。しかし、こうしたイベントの開催がもたらす感染リスクについて、質の高い研究データは限られていました。そんな中、大規模イベントの開催と新型コロナウイルスの感染リスクを検討した研究論文が、呼吸器ウイルスの専門誌に2022年7月27日付で掲載されました。
日本で行われたこの研究では、大規模イベントとして成人式に注目しています。具体的には、成人の日(1月の第2月曜日)前後1週間における新成人(20歳)の新型コロナウイルス感染者と、新成人よりも1歳年下(19歳)、もしくは1歳年上(21歳)の新型コロナウイルス感染者を比較することで、成人式に関連した感染リスクの影響を見積もっています。
解析の結果、新型コロナウイルスの感染者数は、多くの自治体が成人式の開催を控えた2021年では、成人の日の前の週が3万5264人、後の週が2万6474人と、成人の日の前後で減少していました。しかし、2022年では成人の日の前の週が4万5886人だったのに対して、後の週では15万7323人と大きく増加していました。
特に新成人は、19歳や21歳の集団と比較して、成人の日以後に感染者が増加し、2021年では1.27倍、2022年では3.2倍、統計的にも有意に高いという結果でした。一方で、成人式を行わなかった自治体に限定して解析をすると、成人の日の前後で感染者数に統計的有意な差を認めませんでした。
論文著者らは、「イベントを中止するのではなく、感染を回避するための開催方法を議論すべき」としたうえで、「感染リスクに関する適切な情報を、関係者や地域社会に、効果的に伝えることが重要」と結論しています。
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